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甲子園優勝にも「達成感はまったくない」。仙台育英・須江航監督が考える「高校野球における監督の役割」とは? (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文・撮影 text & photo by Kurita Shimei

「打倒・大阪桐蔭」のために必要なこと

――須江監督は常々、「打倒・大阪桐蔭」を意識したチームづくりを行なってきました。神宮大会でも対戦の可能性はありますが、今年のチームでどんな戦い方をイメージしていますか?

須江:「仮想・大阪桐蔭さんとして去年考えていたのは、『自分たちが勝つにはロースコアゲームに持ち込むしかない』というのが大前提でした。そこは何があっても絶対に崩さなかった。今年のチームで考えた場合、攻撃に特長がある選手もいるので、10対9とはいわずとも、6対5に持ち込める可能性は秘めています。

 ただしそれは、前田くんがどれだけ成長するか、という点の影響も出てくる。私のなかでは、数多の好投手を輩出してきた大阪桐蔭さんの歴史上でも、前田くんは1、2を争う好投手だとみています。そんなレベルの彼から点を取るというのは、大変な大仕事です。さらに、彼が私たちの想定以上に伸びたら、当然戦略も変わってきます。

 それでも『日本一を狙って獲る』とは、そういった想定の連続でもあります。来夏の大会を見越した"守ること"の目処が立つのが、6月なのか、4、5月なのか。秋から冬にかけてディフェンス面を固めて、4月からオフェンス面を考えることができれば理想的ですね」

――今夏では「140kmクインテット(五重奏)」投手陣の継投策が話題を集めましたが、秋季大会の準々決勝・鶴岡東戦では、湯田くんがひとりで完封しました。投手起用に関して、継投の基準はあるんでしょうか。

須江:「私は監督としての感性や感覚は備わってない、と強く感じているんです。だから、データを活用したりルールを複数設定したりして補うしかない。例えば投手の場合は、アウトローへの要求がインハイにいってしまうことが続くことを交代の要素とする。だから自チームの選手のデータはかなり細かくとります。客観的なデータがないと、選手も交代に納得してくれませんから。

 去年の1年間を通して、そこは本当に試行錯誤しながらやってきました。トーナメントという高校野球の性質上、その大会を勝ち抜くためにチームの疲労や相性なども考慮して、鶴岡東戦の湯田のようにひとりで投げてもらうこともあります。ウチが大阪桐蔭さんに勝つことを想定するなら、最低限、フレッシュで万全の状態の投手が複数いる必要がある。そういった視点で組み立てを考えます」

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