まさかのポジション変更14回。海老名高校が「奇策」を選択した理由。対戦校の監督は「今回のようなケースは仕方ない」 (2ページ目)

  • 大友良行●文・写真 text & photo Ohtomo Yoshiyuki

「平塚シニアで主軸を打っていた捕手の角谷が入学してきましたが、肩の関節が外れて送球できない状態でした。そうかといって、彼は中心選手ですからメンバーから外すわけには行きません。そこで相手の走者が出たら、その時だけ捕手を替えようと思いました。肩の強い斉藤を捕手にして、多少のミスは目をつぶる覚悟で勝負しました。

 選手たちは忙しく動き回り、相手チームにも大変失礼なことをしているなということは承知しています。ただ、チームとしてこれでいくと決めた以上はやり遂げないといけない。テストケースとして、大会前の練習試合でもこの戦法をやって慣れさせました」

ルール的には問題なし

 川崎監督はその成果について、次のように語る。

「前日(3日)の川崎北高戦でも10回ポジション替えをして、延長11回にやっと勝てました。公式戦では地区大会と今回の県大会で計5試合、この戦法でやらせてもらいました。結果3勝あげることができ、生徒たちも喜んでいるので、それなりに答えは出せたんじゃないかと思っています。相手チームや周りのみなさんのご理解があってのことで、本当に感謝しています」

 この戦法をこれからも続けていくのか。川崎監督に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「毎回、毎回、この戦法を使うわけにはいきません。角谷も1年かけて、肩を完治させるつもりです。それまでに次の捕手を育てないといけませんし、いろいろと考えながらやっていければと思っています。いたずらに試合を長引かせるつもりはありません」

 では、海老名の"奇策"とも思えるこの頻繁なポジション変更を、対戦した横浜創学館の森田誠一監督はどのような印象を受けたのだろうか。

「これだけ何度も捕手が交代するのは、私にとっても初めての経験です。初回に2点をとったものの、なかなかリズムをつかみきれず苦戦しました。公立高校で部員数も少ないでしょうから、今回のようなケースは仕方ないと思います」

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