「世界一」「日本一」経験のエリートが3年夏にようやく手にした背番号13。八戸学院光星・冨井翼の生きる道

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 その後は洗平歩人とのスイッチを挟んで、9回まで0点で防いだ。それでも、延長10回裏に冨井は力尽きた。サヨナラ打を許した冨井に対して、仲井監督は「よく頑張ったし、彼の責任じゃない。胸を張ってほしい」とねぎらった。

「やりきりました」

 試合終了後、宿舎に戻った冨井は晴れやかな表情でリモート取材に応じた。最後の一球は「ちょっと真ん中に入ってしまった」と悔やんだが、それ以上に高校最後の夏を甲子園で終えられた達成感が滲んでいた。

 高校卒業後に野球を続けるかは、今のところ決まっていない。

 冨井は自身の野球人生のなかで何を求めてきたのだろうか。最後にそう尋ねると、冨井はこう答えた。

「とにかく日本一という目標は野球をやるうえで常に目指していました。高校でも甲子園に出られて、日本一をとれたらよかったんですけど......。でも、それ以上の経験ができました」

 輝かしい栄光も、地べたを這いつくばった日々も、すべて誰もが味わえるものではなかった。たとえ競技人生にピリオドを打ったとしても、冨井翼の小さな体に詰まった経験は未来へと背中を押す原動力になる。

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