古田敦也の言葉に救われた元ヤクルト内田和也。プロでの成長に「全国制覇のプライド」は邪魔だった (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

── 立正大立正高もハンドブックやチームマニュアルといったものはあるのですか。

「西武時代に『ライオンズ必勝法、必敗法』というマニュアルがあって、コーチが読み上げるものをノートにとっていました。たとえば『ランダウンプレーの時、走者はこういう動きをしなさい』などです。今はグラウンドが使えない日に、コンピュータールームの巨大スクリーンにそれを映し出し、部員に書かせています。

 最近は野球部部長と"立正大立正高版・野球ハンドブック"をつくろうと計画しています。それに生徒には次世代に残す"野球ノート"を書いてほしいと思っています。たとえば『◯◯球場の外野フェンスのクッションボールの跳ね返り方はこうだ』とか、『◯◯高校はこういうトリックプレーをしてくる』とか。何でもいいから、自分が気づいたことをノートに書き留めてほしい。それがチームの伝統になってくれたらうれしいですよね」

日大三・小倉監督の教え

── 高校時代の全国制覇やプロでの経験が生きていると感じる部分はありますか。

「プロを経験したがゆえに相手の戦力を分析してしまうので、強豪校を食ってしまうような番狂わせは少ない気がします。逆に、狙ったところまで勝ち進めるのではないかと思っています」

── 日大三高の小倉監督から学んだことは何ですか。

「小倉監督はモチベーターだったので、"言葉の力"で選手をその気にさせ、力を引き出していました。私の野球の礎になっているのは、やはり小倉監督です。コミュニケショーンは大事にしたいですし、今後は積極的に取り入れていきたいですね」

── 小倉監督にかけてもらった言葉で印象深い言葉は何ですか。

「高校3年夏の都大会が始まった時、自分はスランプのどん底にいたのですが、小倉監督から『歩きながらスイングしてみろ』と。歩きながらバットを振ることで、トップの位置が決まるのですが、これを機に復調して、全国制覇まで3番打者としての仕事ができました。絶妙なタイミングでアドバイスできる指導者になりたいです。

 それ以上に小倉監督の言葉で印象に残っているのは、『家族を養うためにお金を稼ぐということは、覚悟を持って仕事をすることだ』です。これはプロに行く時に言われた言葉なのですが、当時はピンときてなくて、実感はなかったのですが、歳をとるごとに心に響くようになりました。どんな仕事でも途中で投げ出さず、最後までやり遂げることが大事だと」

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