國學院久我山が「3本の矢」で初のベスト4。強力打線の大阪桐蔭も「全員野球」で上回るか

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

尾崎監督が推進する全員野球

 春のセンバツでは近江(滋賀)の山田陽翔、浦和学院(埼玉)の宮城誇南のように、いつも先発マウンドを任されるエースの姿が目につく。準決勝進出までひとりで投げ抜いた山田は3試合で31回379球、3試合で23回3分の1を投げた宮城の投球数も300球を超えている(305球)。 

 高校野球の歴史を振り返ると、エースナンバーを背負った主戦投手が先発完投することが多く、マウンドを降りるのは勝負が決まった時だった。しかし、投球過多の問題が浮上するようになり、今では複数のピッチャーによる継投で勝利を目指すチームが増えてきた。

 東京大会を制して甲子園に乗り込んできた國學院久我山には3人のピッチャーがいる。ひとりは背番号1で、登板しない時にはファーストを守る右投げの成田陸。背番号10の松本慎之介は技巧派のサウスポー、背番号11の渡辺建伸は秋の明治神宮大会で背番号1をつけたサウスポーだ。

國學院久我山の3人の投手、(左から)松本、成田、渡辺國學院久我山の3人の投手、(左から)松本、成田、渡辺この記事に関連する写真を見る 1回戦の有田工業(佐賀)戦で先発を任されたのは、エースナンバーをつけた成田だった。スライダーを効果的に使った投球で9回を2失点に抑え、センバツ初勝利を呼び寄せた。

 その好投を見ながら「投げたくてうずうずしていた」渡辺と松本が奮い立った。2回戦の高知(高知)戦で先発した渡辺は4回を1点に抑え、5回からマウンドに立った松本も2失点しか許さなかった。3人を起用した尾崎直輝監督が「甲子園での初マウンドでこんなに投げてくれると思わなかった」と驚いたほどのピッチングだった。

苦しい場面でも賢く戦う選手たち

 3月28日、星稜(石川)戦で先発したのは、初戦で完投勝ちをした成田だった。序盤は危なげないピッチングを見せたものの、4回表に2点を先制されて苦しい展開になった。しかし、5回裏に下川辺隼人のホームランなどで逆転。そのあとにマウンドに上がったのは渡辺だった。6回を3者連続三振で切って、7回、8回も無得点で切り抜けた。

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