國學院久我山が「3本の矢」で初のベスト4。強力打線の大阪桐蔭も「全員野球」で上回るか (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 4-2で迎えた最終回、渡辺がフォアボールを出し、続く打者にもツーボールとなったところで、ブルペンからマウンドに向かったのが松本だった。大会前の最速が130キロだったストレートを甲子園で138キロまで伸ばしたサウスポーは、九番打者にヒットを打たれノーアウト1、2塁のピンチを招くも、後続の3人を切って取り、初めてのベスト4を手繰り寄せた。

 厳しい場面で松本をリリーフに送った尾崎監督は言う。

「松本をノーアウト1塁、ツーボールの場面で投げさせてしまって、かわいそうなことをしたと思いました。ただ、彼は賢い選手なので、4-2という状況に応じたピッチングができると考えました」

 ここまで、それぞれの投球イニングは成田が14回、渡辺が8回3分の0、松本が6回。3人とも疲労を感じてはいない。マウンド上では、与えられたチャンスをモノにしようという意欲的な投球が見られる。

 3人の起用法について、尾崎監督は言う。

「この日は、調子のいい順番でマウンドに上げました。二番手の渡辺の調子もよかったので、『第2先発のつもりで準備して』と言いました。うちは、誰が先発しても試合を作ることができます。頼もしいピッチャー陣をどう組み合わせるかは監督の仕事ですね」

リズムとテンポと間を使って

 準決勝進出までの3試合でチームの得点14に対して、失点は7。タイプの違う「3本の矢」をうまく組み合わせることによって、常に自分たちのペースで試合を進めここまで勝ち上がった。

 準決勝の相手は大阪桐蔭(大阪)だ。初戦で鳴門(徳島)を3-1で下したあと、準々決勝の市立和歌山(和歌山)戦では大会記録に並ぶ6本塁打を放ち、17-0で圧勝している。國學院久我山の3人のピッチャーは140キロを超えるスピードボールも魔球も持っていない。持ち前のコントロールと配球で抑えることができるのか。

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