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冬の鍛錬と漢らしさが根底、盛岡大付の史上最強打線。ふさわしい呼称は、わんこそばかペンギンか... (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今大会、「守りからリズムをつくる」というような守備型の野球を標榜する監督が多いなか、本塁打を「最高」と語る関口監督の言葉は新鮮ですらあった。

 一方、本塁打を打った平内に「盛岡大付の野球のキモはどこにあるのか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「ウチは長打2本で1点を取る野球を目指してやってきました。ウエイトトレーニングで体をつくって、甘い球を1球で仕留めること。この2点を大事にしています」

 長打力を武器にしたチームづくりは、決して簡単ではない。ましてや盛岡大付の練習環境を知れば知るほど、その道のりは困難に思える。

 意外と知られていないことだが、盛岡大付には室内練習場がない。

 雪の降りしきる冬場でもグラウンドを使い、選手がランニングで雪を踏み固めてバッティング練習を敢行する。スパイクの代わりに長靴を履き、バッティンググラブの代わりにゴム手袋をはめ、金属バットの代わりに折れにくい竹バットを振る"雪上バッティング"。その過酷さをプロ注目打者の松本はこう語っていた。

「練習が終わるとバットを持てなくなるくらい、腕がパンパンになります」

 平内が語る「ウエイトトレーニング」にしても、グラウンドに併設された簡素なビニールハウスで行なう。強豪私学と言えば充実した設備を想像してしまうが、盛岡大付の環境は決して恵まれているわけではないのだ。

 その代わり、選手は心身ともたくましく成長していく。2012年夏に主将を務めたOBの藤田貴暉さんはこんな話を教えてくれた。

「関口先生は怒鳴るような指導はしないんですけど、『漢(おとこ)らしさ』にこだわります。『男』じゃなく、『漢』なんです。関口先生はよく言っていました。『田んぼの力』の男なんじゃない、漢だろう。漢なら格好の悪いことをするなと」

 冬の鍛錬と"漢"らしさ。それが盛岡大付の強打線の根底にある。

 それにしても、個人的に引っかかるのは盛岡大付の強打線を表す「わんこそば打線」というネーミングである。岩手名物のわんこそばに「打ち始めたら止まらない」というニュアンスを結びつけ、いつしかメディアの間で定着していた。

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