ドラフトの主役になれるか。創価大左腕はあのパ・リーグ新人王を超える逸材だ
鈴木勇斗の名前を最初に聞いたのは、昨夏に創価大の捕手・萩原哲(現・巨人)をインタビューした時だった。萩原は弾んだ口調でこう語っていた。
「ちょっとすごいですよ。上背はないんですけど、オープン戦ではストレートだけでもまともにバットに当たらないんですから」
創価大のプロ注目左腕・鈴木勇斗 昨秋の関東地区大学野球選手権(横浜市長杯)で初めてその姿を見て、萩原の興奮が理解できた。同大会で鈴木は自己最速の152キロを計測し、エースとしてチームを準優勝に導いた。準決勝の上武大戦ではリリーフとして3回2/3を投げ、9奪三振と快刀乱麻の投球を見せている。
ある試合の後、ベテラン指揮官の岸雅司監督(2020年限りで退任)は鈴木についてこう語った。
「八木(智哉)を超える素材だと思います」
八木は創価大のOBであり、2005年に希望入団枠で日本ハムに入団。1年目には12勝8敗、防御率2.48の成績で新人王に輝いている。日本ハム、オリックス、中日と渡り歩き、12年間の現役生活で39勝をマークした左腕だった。
岸監督の言葉どおり八木を超える日がくれば、鈴木は当然、ドラフト1位でプロに進むような存在になるはずだ。
4月7日、大田スタジアムでの東京新大学リーグの開幕戦に、12球団30人を超えるスカウトが視察に訪れた。平日開催のためアマチュア野球のめぼしい試合が他になかった背景や、第1試合に登場する創価大だけでなく第2試合にも小向直樹(共栄大)というドラフト候補右腕がいたこともスカウト陣の集結に拍車をかけた。
杏林大との開幕戦の先発マウンドに鈴木が立つと、バックネット裏のスカウト陣は前のめりになって鈴木の投球に見入った。そのなかには今や中日のスカウトになった、八木の姿もあった。
しかし、鈴木は立ち上がりからスピードが乗ってこない。結果的に、この日の最高球速は143キロに留まった。
試合後、創価大の堀内尊法監督は鈴木について「本調子ではありませんでした。私も佐藤(康弘)ピッチングコーチも『キレはまだまだ』と感じています」と語っている。
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