2020.10.26

中学では最速114キロの7番手。
学法福島の左腕が成長→ドラフト候補へ

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Takagi Yu

「これは高校生か⁉︎」と思うような選手が、中学の硬式野球を取材していると時折ある。全国大会上位になればなおさらだが、2017年のリトルシニア日本選手権で見た神戸中央リトルシニアもそんな"タレント軍団"のチームだった。

 この大会で3位に躍進すると、中学硬式野球の日本一を決めるジャイアンツカップでも8強入り。そんな彼らの試合を見ていたはずだが、今年プロ志望届を提出した神戸中央リトルシニア出身の左腕・辻垣高良(学法福島/左投左打、181cm)の印象はというと、失礼ながらまったく記憶にない。

9月に行なわれたプロ志望高校生合同練習会で好投した学法福島の辻垣高良「同学年だけでも30人近くいて、投手のなかでは7番手か8番手くらいでした。リトルシニア日本選手権もジャイアンツカップもベンチには入っていません」

 当時、辻垣の姿はマウンドではなく、スタンドにあったのだ。そんな男がいかにして"ドラフト候補"へと成長を遂げたのか。

 学法福島は福島県福島市にあり、正式名称は学校法人松韻学園福島高等学校。仙台育英で多くの実績を残した佐々木順一朗監督が就任した学法石川高校と混同されることは多いというが、まったくの別法人である。

 国学院大OBの藤森孝広監督のもと、昨秋の福島大会を53年ぶりに制した。その原動力となったのが、今や最速143キロを投げるまでに成長を遂げた辻垣だ。

 地元だけでなく、辻垣のように関西や関東からも選手が来ているが一線級の選手はなかなか来ない。藤森監督が「お預かりした選手を人間として必ずプラスにしてお返しするという感覚です」と話すように、そうした積み重ねで信頼を得て、さまざまな選手が縁や紹介で福島にやってきている。

 辻垣も中学時代の実績は皆無で、同じく神戸中央リトルシニアではレギュラーではなく高校でバッテリーを組む梅田誉希とともに福島へやって来た。ヒジや腰の故障の出遅れでメンバー外とはなっていたが、神戸中央リトルシニアの山田高広監督からも「焦る必要はない。高校、大学で勝負しろ」と励まされていたこともあり、「自信をなくすことはありませんでした」と振り返る。