元プロ監督「岡本和真を目指せる」。
智辯和歌山の4番は名前も体格も見事だ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

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 智辯和歌山の主砲・徳丸天晴(とくまる・てんせい)が打った瞬間、スタンドにいた誰もがホームランになることを察知したに違いない。残された興味は「どこまで飛ぶか?」の一点に絞られた。

 高弾道の打球は紀三井寺球場のレフトフェンスをはるかに越え、芝生席を通過し、球場敷地の境目に設けられた高い防球ネットの支柱に直撃。「ゴーン!」と、まるで鐘をつくような重低音が鳴り響いた。

 スカウト、メディア、高校野球関係者、控え部員と保護者のみが入場したスタンドは、異様な光景にどよめきが起きた。

1年から名門・智辯和歌山の4番に座る徳丸天晴1年から名門・智辯和歌山の4番に座る徳丸天晴 この特大ホームランで7点目を加えた智辯和歌山は、その後も猛攻を展開。13対0の7回コールドで箕島を下し、秋の和歌山ベスト4進出を決めた。

 試合後、徳丸はホームランについて「すごく感触がよくて打った瞬間いったと思ったんですけど、どこまで飛んだかは見ていませんでした」と語った。これが高校通算28本目の本塁打で、新チームになってから12本目。量産態勢に入ってきた。

 2019年春、東妻純平(DeNA)、黒川史陽(楽天)らを擁した智辯和歌山は選抜高校野球大会(センバツ)でベスト8に進出した。そしてセンバツ帰りの春の和歌山大会では、驚きのニュースが駆け巡った。なんと入学したばかりの1年生が4番に座ったのだ。その1年生こそ、徳丸だった。

 身長184センチ、体重86キロ。雄大なフォロースルーが魅力の長距離砲である。そして何よりも大きな特徴は、その福々しい名前にある。徳丸天晴。「徳」「丸」「天」「晴」、どこを切り取っても縁起がよさそうな、あっぱれな名前だ。

「いい名前ですね」と本人に向けると、恐らくこれまで何百回と言われてきたのだろう。徳丸は苦笑しながらこう答えた。

「僕はわかんないですけど、周りからそう言ってもらえるのはとてもうれしいことなので、親に感謝ですね」

 名前も体格も、プレースタイルまでスター性は抜群。とはいえ、1年時から名門の4番に座った徳丸が華々しく活躍できたかといえばそうではなかった。

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