1週間500球の制限に「公立つぶし」の声も。初適用の当事者たちが語る違和感 (5ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Nikkan sports

 1週間500球ルールについて、ある公立校の指導者はこう言っていた。

「公立つぶしのルールですよ。いいピッチャーが1人いることさえ稀なのに、複数揃うことなんてない。このままじゃ、ますます私学の独壇場になりますよ」

 スカウティング偏重が進む昨今の高校球界。私学が投手の頭数をそろえようと躍起になれば、ますます公立など弱者は弱体化し、強豪校との二極化が進んでしまう。高校野球の醍醐味のひとつでもある番狂わせや無印校の"旋風"は見られなくなってしまうだろう。

 最後に、元日本ハムの投手だった有倉監督の言葉を紹介したい。原田を交代させたときの心境だ。

「ここまで我慢させなきゃいけないのかって思いましたね。コロナで今年はいろんな我慢をさせてきたので、余計に......」

 投げたいのに投げられない。自らもその経験があるから、有倉監督は原田の気持ちが痛いほどわかる。

「今回のことを見て、上の人がどう思うのか......。僕は、それしか言えません」

 手段が目的化されているルールはいらない。本当に必要なのは、選手も現場も納得する、目的が達成されるルールだ。原田の504球は、独自大会のせいか全国的にはあまりニュースになっていない。甲子園交流試合開幕前日に起こった日本初の事例を、決して無駄にしてはいけない。

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