県岐商・鍛治舎監督は猛反対も改革断行。新ユニフォームに思いを込めた (3ページ目)

  • 大友良行●文 text by Ohtomo Yoshiyuki
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 鍛治舎はパナソニックに在職していた頃、ブランドコミュニケーション本部長、宣伝部長などを経て、専務取締役の要職まで勤め上げた経験から、ワールドビジネスの手法を野球にも生かしている。

「日本人は日の丸の白と赤を好むと言われています。その次に青と黄色の人気があります。補色の関係で目立つし、わかりやすいからでしょう。この色の組み合わせは、選手たちが一段と大きく見えるので私は好きですが、秀岳館をそのまま持ってきたわけではありません。"ルック(見た目)&フィール(操作性)"という手法を、新ユニフォームに取り入れました」

 時代の寵児でもあったアップル社のスティーブ・ジョブズや、マイクロソフト社のビル・ゲイツも"ルック&フィール"の手法を自社製品に取り入れて、成功をおさめたという。その手法を野球のユニフォームに取り入れるあたり、世界を相手に仕事をしてきた鍛治舎らしい試みだ。

 新しいユニフォームができて1年も経っていないうちに結果を出した鍛治舎だが、周囲の反響はどうなのだろうか。野球部OB会の太田郁夫委員長は、次のように語る。

「平成元年から15年間は甲子園に出場しても勝ち上がれなく、低迷期でした。たしかに、伝統にどっぷり浸かり、前に進むことを忘れているチームでした。それが鍛治舎監督になって変わってきました。昨秋から関東、関西遠征などを行ない、強豪チームとやっても見劣りしなくなりました。とにかく監督はビジネスマンだったので、先を見て、踏み出すのが早い。校長にも『こうしなくてはダメ』と正面から言ってくれます」

 県岐商は、これまで甲子園で公立校として最多となる春夏通算87勝を挙げている。戦前には春3回、夏1回の全国制覇を成し遂げている古豪だ。野球部創設100年にあたる2024年まであと5年。鍛治舎は目標について次のように語る。

「それまでに甲子園で13勝して、100勝まで持っていきたい。もちろん、それで終わりではないので、次の100年の間にまた100勝する。そういうチームの基盤を、私がつくりたい。そういう思いでやっています」

 来春のセンバツ出場が有力視されている県岐商。新調したユニフォームとともに、甲子園で新たな歴史を刻むのか。その戦いが待ち遠しい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る