力を伸ばした北照の「最弱世代」が甲子園でも成長。要因を監督が語る

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 2016年8月、北照(南北海道)は『秋季北海道大会への出場を辞退する』と、道の高校野球連盟に届け出た。原因は部員による暴力や校則違反で、活動停止処分に。その期間が明けたあとの2017年1月に、長く同校野球部の部長を務めていた上林弘樹が監督に就任した。

 再出発した野球部は、2018年夏の南北海道大会を勝ち抜いて5年ぶりに甲子園出場を果たす。結果は初戦敗退(福岡の沖学園に2-4)だったが、今年も南北海道大会の決勝に進み、札幌国際情報との延長14回の接戦を制して(4-3)甲子園に戻ってきた。

夏の甲子園での初勝利を目指した北照の選手たち夏の甲子園での初勝利を目指した北照の選手たち 悲願である"夏の甲子園での1勝"を目指す初戦の相手は、中京学院大中京(岐阜)。3年ぶり7度目の出場となる中京学院大中京は、岐阜大会決勝で甲子園常連校の大垣日大を逆転で下したチームで、予選6試合のチーム打率は.426を誇る。

 その強力打線に立ち向かったのが、北照の「エースで四番」の桃枝丈(もものえ・じょう)だ。

 5回まで0-0で進んだ試合の均衡を破ったのは、桃枝のバットだった。6回表ツーアウト一、三塁の場面で打席に立ち、センター前ヒットで1点を先取。投げてはその裏の攻撃をしのぎ、勝利まで残り3イニングとなった。6回まで被安打4と好投していた桃枝だったが、7回裏、上林監督がもっとも避けたかった「ビッグイニング」を許してしまう。

 中京学院大中京の九番・元謙太(げん・けんだい)がレフト前ヒットで出塁すると、ワンアウト後に二番・申原愛斗が左中間への二塁打を打ち同点に。桃枝はツーアウトまでこぎつけたが、四番・藤田健斗にレフト前ヒットを打たれ逆転を許した。続く五番・小田康一郎にもレフト前に運ばれ1-3。さらに三振振り逃げとライト前ヒットでもう1点を失った。

 北照は8回表に1点を返し、9回表にも八番・山崎昂大のセンターオーバーの二塁打で1点差に迫ったが、あと1本が出なかった。

 試合後、インタビューの場に立った上林監督は、開口一番こう言った。

「春の北海道の大会では支部予選で負けたチームが、よくやってくれました。桃枝もよく投げてくれた。勝たせてやれなかったのは僕の責任だと思っています」

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