2019.07.04

練習時間1日50分。進学校の
152キロ右腕が広島の歴史を塗り替える

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 岡嵜は言う。

「初めて谷岡のキャッチボールを見たとき、『体に柔軟性と強さが備わってくれば、140は出せるな』とは思っていたんです。ウチの練習メニューで、140キロ投手に育て上げる自信は持っていました。けど、それ以上は正直想像していなかった。2年夏以降の彼の進化は、僕の予想をはるかに上回っていますね」

 谷岡が続ける。

「最初140キロを目標にしたときも『投げられたらいいな』くらいの気持ちで、目標というよりも”夢”みたいな感じでした。もっと言うと、入った時は『投手として通用するのかな』と思っていたぐらいで……。考えが変わったのは140キロが出るようになった1年夏ごろ。練習を続けていけば、150キロに届くかもしれないと思うようになってきました」

 順調に進化を続けていたが、高校野球最後のシーズンイン直後にひとつの”落とし穴”が待っていた。4月初旬の練習中に左足の股関節を故障。大事を取って春の県大会での登板は回避し、5月頭から投球練習を再開した。

 このアクシデントの際、岡嵜は「”原因の原因”を考えなさい」と谷岡に課題を与えていた。岡嵜がその意図を説明する。

「ひじの故障の原因が『トップで肘が十分に上がっていなかった』ことだとします。この場合、『ひじが上がっていない』という原因がわかっていたとしても、『なぜひじが上がってこないのか』という”原因の原因”を突き止めないことには状況は改善されません。体重移動に問題があるから肘が上がらないのか、そもそもの柔軟性が足りていないのか。そこを追究することが必要だと思っています」

 岡嵜の言葉を受けた谷岡は熟考を重ね、ある気づきを得た。谷岡は言う。

「自分のフォームを振り返ると『踏み込んだ左足がインステップしている』ことに気がつきました。インステップしているのに強引に腕を振ろうとするから、左足の股関節に負担がかかってしまう。原因であるインステップがなぜ起こるのかを考えたとき、フォームの始動からリリースまでに”力み”があったからだと気づけたんです」