2019.02.17

バットをPCに持ち替えた
「由伸2世」は1億円プレーヤーを目指す

  • 清水岳志●文・写真 text&photo by Shimizu Takeshi

 東京のオフィス街のど真ん中、六本木一丁目がホームグラウンドになった。IT企業のビジネスマン。これまで着慣れたユニフォームからスーツとネクタイ姿になり、履き慣れたスパイクは革靴となった。

 起床は6時半。実家の埼玉から1時間かけて通勤する。朝食は途中のコンビニで調達し、オフィスには8時過ぎに着く。始業の10時までは自身の勉強と仕事の準備にあてられる。野球で言うなら、ウォーミングアップである。

「今はそういうサイクルを無理やりつくっています。IT企業に入ったのに、パソコンにまだ不慣れで……話を聞きながら打てず、ノートにメモを取っているのは自分だけです。仕事が遅いので与えられたものが定時(19時)までに終わらないので毎日残業です」

尊敬する塾高野球部の先輩でもある福山氏が勤めるIT企業に就職した谷田成吾(写真右) 慶応大の中軸を打っていた時からまだ3年とはいえ、すでに隔世の感がある。慶応大の先輩で巨人の監督を務めた高橋由伸になぞられ”由伸2世”と呼ばれたこともある。かつてプロ野球界が注目した打者・谷田成吾25歳)がビジネスマンとして第一歩を踏み出した。

 子どもの頃から、野球界の中心を歩いてきた。リトルリーグで世界大会準優勝、シニアの3年間で6回の全国大会出場。慶応高時代は甲子園出場こそないが、高校日本代表メンバーに選ばれ、AAAアジア選手権の優勝メンバーとなった。慶応大では1年春から左の強打者として活躍し、4年間で15本のホームランを放った。

 長打力はもちろん、”由伸2世”というスター性も備え、2015年のドラフトでは上位指名候補に挙げられていた。だが、どこからも声がかからず、まさかの”指名漏れ”となった。

「バッティングについては、飛ばすことは評価されていたと思いますが、それ以外のものは足りないものばかりでした。好調と不調の時の差がありすぎて……確率が悪く、三振も多かった。足も遅くはないのですが、それでメシが食えるほど速いわけではない。指名がなかったのは当然かなと」