根鈴雄次が挑むフライボール革命。「ヒットの延長が本塁打」にNO (3ページ目)

  • 広尾晃●文・写真 text&photo by Hiroo Koh

 根鈴は、打球に角度をつけて上げるように指導するが、それは「引っ張る」ことではない。

「日米野球で、ソトが振り遅れみたいに打った打球が左中間スタンドに突き刺さりました。ああいうのがいいんです。左打者だったら、スタンドティーの打撃では全部左中間狙わせる。真ん中より右には1球も打たせない。ティーは真ん中よりもやや外目の甘い位置で、自分の踏み込んだ足より中でガーンと激しいライナーが出るようにまず仕上げていく。

 フライを上げるというより角度をつけたライナーを打つという感じです。ランチアングル(打ち出し角度)を意識します。

 大谷翔平選手が去年4月、そういう打ち方で左中間に3発連続でホームランを打ちましたが、あれでアメリカの人たちは『おおー!やるな』と彼を認めたんですね」

 根鈴は「ヒットの延長がホームラン」という日本の考え方も否定する。

「日本では『野手の間を抜く当りを打て』なんて指導していますが、ヒットっていうのはたまたま野手のいないところにボールが落ちただけで、運の問題なんですね。本当は『ホームランを狙って打った当り損ねが安打になる』んですよ。だから、アメリカの子どもはみんなホームランを打とうとします」

 セイバーメトリクスの代表的な研究者のひとり、ボロス・マクラッケンは「フェアグラウンドに飛んだ打球が、安打になる確率は、打者、投手の実力に関係なく3割前後になる」ことを発見した。

「安打は運の産物」という発表はアメリカでも衝撃的だったが、いまだに彼の研究を否定することができない。根鈴の見方は荒唐無稽のように見えて、最新の野球理論に沿っているのだ。

「根鈴道場」を開いて1年、生徒数は増加している。

「予約が取れないくらいに、スケジュールがパンパンになってきた。最初、土曜日はオフにしてのんびりしようと思っていたけど、土曜も道場をやるようになった。 豪快な長打が打てるバッターになりたいという子しか来ないですね。あとはYouTubeでメジャーリーグしか見ない子とか。野球は大好きだけど、高校野球はそれほど好きじゃなくて将来は英語を勉強してアメリカに行く、みたいな子が少しずつ増えてきています」

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