根尾、藤原も苦戦。大阪桐蔭を抑えた「小さなエース」の気になる進路 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 延長戦に突入し、山口の球数は150球を越えたが、10回表に1本ヒットを打たれて以降は試合終了まで星稜打線をノーヒットで抑えた。

「試合が終わったあとは気が抜けて......試合直後は疲れを感じていましたが、また甲子園で試合ができるという喜びを感じながら、インタビューに答えていました」

 かつて済美のエースだった安樂智大(楽天)が2013年春のセンバツで投じた「772球」を引き合いに、山口の184球の投球数が問題視された。しかし、そんな騒動をよそに、山口は淡々とこうコメントした。

「疲れはありましたが、勝ちたいという思いが強かった」

 山口は甲子園で5試合、607球を投げたが、肩もひじも痛みを感じることはなかったという。

春の大会が終わってからチェンジアップを習得

 1年前、ボールボーイとして激闘を眺めることしかできなかった男が、甲子園で堂々としたピッチングを披露するのだから、高校生の成長には驚かされるばかりだ。

 新チームになってからエースになった山口だが、最後の夏までは目立った成績を残せずにいた。春のセンバツ出場権がかかった秋季愛媛大会では準決勝で敗れ、春の大会では県大会決勝で逆転負けを喫している。甲子園で山口に注目する人がいなかったのは当然だった。

「春の愛媛大会決勝はフォアボールが原因で逆転されたので、それ以降はコントロールを意識して練習するようになりました。意識することは本当に大事だと思います。練習のときからボールを放つリリースポイントに気をつけ、守備のリズムが悪くならないように投球のテンポにも気を配りました」

 4月から最後の夏の予選までの3カ月で、山口は自分の武器を身につけた。チェンジアップを自在に操れるようになったことでピッチングの幅が広くなった。

「チェンジアップを投げるようになったのは、春の大会が終わってからです。7月の愛媛大会では効果的に使えましたし、スライダーも速くなり、キレもよくなった。コントロールと変化球のキレを意識して練習したおかげで、愛媛大会でも甲子園でも抑えることができたんじゃないかと思います」

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