2018.09.16

野球が進化すれば道具も変わる。
「固定概念」を覆す職人の闘い

  • 井上幸太●文・撮影 text & photo by Inoue Kota

【連載】道具作りで球児を支える男たち 湯もみ型付け(2)ウィズシー/B.C Works

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 清潔感のある店内に日光が差し込み、キラキラと反射する。白を基調とした解放感のある店内は、野球ショップというよりも、さながら”アパレルショップ”のようだ。

「そう言っていただけるとうれしいですね。弊社は『固定観念にとらわれず、野球界に新しい風を吹かせる』という方針を掲げていることもあって、あまり『野球感』を前面に出しすぎないように心がけています。『THE・野球専門店』という店内装でないからこそ、気軽に来店いただけるんじゃないかなとも思っています」

 こう笑顔で答えるのが、岡山県備前市にある「株式会社ウィズシー」に勤める藤本英樹(ひでき)だ。以前は岡山市の「フジモトスポーツ」で店長を務めていたが、現在は備前市にあるウィズシー内で、グラブを中心とした加工を行なう「B.C Works(ビーシー・ワークス)」を運営している。

株式会社ウィズシーのアドバイザー兼B.C Works代表の藤本英樹氏 藤本が湯もみ型付けを学んだのが、約17年前。2000年代前半のことだった。

「当時は『第1次スラッガーブーム』と呼べるような状況で、知る人ぞ知る、”通好み”な存在だった久保田スラッガーの認知度が一気に上がりつつあった時代でした。しかもスラッガーのグラブは、お湯につけてから型をつける。『革に水分は大敵なはずなのに、どういった原理なんだろう』と興味が湧いて」

 かねてからフジモトスポーツに久保田スラッガー社との取引があったことに加え、藤本の祖父の代には江頭重利氏が同店の担当を務めていた縁も手伝い、福岡支店での研修が実現した。

「福岡で約1週間、研修を受けました。まずは捕球に関する理論を教えていただき、『捕球と送球を繋ぐために”型”を付ける必要があるのか!』と納得。その型を付けるにあたって、グラブの重量を不必要に増やさず、短期間で仕上げるためにはお湯が適している、と聞いて『なるほど。理に適っている!』と2度納得。当時23歳でしたが、新鮮で多くの刺激をいただいた1週間でした」

 福岡で学んだ技術を生かし、岡山に戻ってからも数多くのグラブに湯もみ型付けを施した。当時の藤本が施していたのは、福岡の直営店に近い浅めの型。湯もみ型付けの前に行なう、紐の調整、芯(親指、小指部にある、グラブの骨格となるパーツ)の丁寧な加工も相まって好評を得た。