2018.08.27

時代遅れと言われても。金足農が
ブレずに貫いた「ザ・高校野球」戦法

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 30年以上前は、当たり前だった。特別なことは何ひとつない、ごくごく普通の野球だった。エースが1人で投げ抜き、レギュラー9人がフル出場する。走者が出ればバントで送り、三塁まで進めばスクイズで点を取る。今大会、金足農が見せた野球こそが"ザ・高校野球"といってもいい。当時は、それがスタンダードだった。

エース吉田輝星の奮闘と粘り強い攻撃陣がかみ合い、準優勝に輝いた金足農 ところが、近年はその野球が見られない。時代とともに、高校野球が変わったからだ。昨年夏の甲子園で大会新記録の68本塁打が乱れ飛んだことに象徴されるように、現代は打ち勝つ野球の全盛時代。1点をコツコツ取りにいくよりもビッグイニングを狙う。走者が出ても、送りバントをしないことが珍しくなくなった。

 どの学校も「打たなければ勝てない」と、打つことに力を入れるようになり、バントにこだわるチームは極端に減った。だからこそ、今夏の金足農の「走者が出れば送りバント」という、ひと昔前は当たり前だった野球が個性を持つようになったのだ。

 多くのチームが打つことに力を入れる一方で、バント練習をする時間は減っている。バント練習をしないということは、裏を返せばバントに対する守備の練習も必然的に少なくなっている。それが、準々決勝で金足農に2ランスクイズを決められた近江ナインの「2ランスクイズは頭になかった」「練習したことがない」という発言につながる。

 このように、ほかのチームが力を入れていない部分にこだわりを持ち、力を入れてきたからこそ、金足農の快進撃は生まれたのだ。

 もちろん、その背景にはエース・吉田輝星(こうせい)の存在がある。最速150キロを投げ、スタミナも抜群のスーパーエースがいたから、どんな相手に対しても失点を計算して戦うことができた。吉田が投げれば3点以内には抑えてくれる。だから、1点ずつ積み重ねる戦法が可能になった。