2018.08.26

落合博満が最後のひと押し。
常識を覆したバットは柔らかくても飛ぶ

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

【連載】道具作りで球児を支える男たち ビヨンドマックス

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「バッチ、ビヨンド~! 外野バックね~!」

 軟式野球に親しんだことのあるプレーヤーなら、一度は聞いたことのあるフレーズではないだろうか。

 軟式野球は、硬式野球に比べて点が入りづらいと言われている。使用するゴム製のボール(軟球)が硬球に比べ、飛距離が出にくくなっていることが主な原因だ。しかし、冒頭のフレーズで登場した”ビヨンド”こと、ミズノ社の「ビヨンドマックス」が、その常識を覆した。

 ビヨンドマックスの大きな特徴が、ボールを捉える芯の部分が柔らかい素材で作られていることだ。こうすることで、軟球特有の変形を抑え飛距離アップを実現している。

 軟式野球に新たな潮流をもたらすバットが2002年に発売されると、累計70万本以上を売り上げる大ヒット商品となった。企画が持ち上がった2000年当時から開発に関わり、現在もビヨンドマックスに携わっている木田敏彰(きだ・としあき)は、開発に着手した理由をこう振り返る。

「軟式野球は、少年野球から社会人までの幅広い年代で親しまれる競技ですが、カテゴリーが上がるに伴って投手のレベルが上がるため簡単に打てなくなる。その上、ボール自体も飛びづらいとなると必然的に投手戦が多くなってきますから、バットに対するユーザーの要望はなんといっても『飛び』なんです。また、全日本軟式野球連盟からも軟式野球をもっと楽しんでもらうために『飛距離の出やすい軟式バットを作ることはできないか』と打診を受け、飛ぶバットの開発を本格的にスタートしました」

初代ビヨンドマックスの開発に携わった木田敏彰氏 開発当初は、硬式バットで用いられる高強度な材料を中心に「反発に有利」と思われる金属素材を試したが、軟式ボールに対しては今ひとつ結果が伴わなかった。

「『軟式ボールを飛ばす方法はないのか』と、色々な構造で試作をしましたが、軟球ボールの反発性能を向上させる構造は見つからない状況でした。そこで打撃時に大変形を起こすボールに着目し、『バットの構造をどうこう考えるのではなく、ボールの変形を少なくできないか?』と発想を転換することにしたんです」