「限りある野球人生に後押しを」松坂愛用のグラブに込められる思い (2ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 するとその青年は、「自分も高校野球をやっていたので、2年半の短さ、そのなかで納得のいくグラブに出会う難しさはよくわかります。優先してもらうのは、全然かまいませんよ」と、笑顔で答えた。この言葉を受け、「いいお客さんに恵まれている」と再認識したという。

「今、オーダーグラブは半年以上待っていただいています。『遅い!』と言われてもおかしくない状況ですが、そういった苦情はほとんどありません。『待ってでもほしい』と言ってくださる方ばかりで・・・・・・。本当にありがたいです」

「RYU」のグラブを取り扱う「ますかスポーツ」の五十住氏「RYU」のグラブを取り扱う「ますかスポーツ」の五十住氏 通常、オーダーグラブは、発注をかけたタイミングで料金を支払う"前金制"を採用することがほとんどだ。既製品に比べ高価なため、発注後のキャンセルや、完成品の受取拒否への対策という側面もある。しかしながら、RYUのオーダーは完成後に代金をもらう形を採っている。これも五十住の"ポリシー"のひとつだ。

「もちろん、キャンセルなどのリスクを考えたら、前金制のほうが安心です。でも、お客さんが『時間がかかってもほしい』『RYUのグラブをますかスポーツで買いたい』と、"覚悟と信頼"をもって注文してくれている。店としても、その強い気持ちに対して"信頼"で応えたいんです。ひょっとすると、認知度が上がるなかで冷やかし目的のオーダーをする人も出てくるかもしれない。でも、それはひと握り。お客さんに恵まれている、支えられていることが実感できているので、そこを変えるつもりはありません」

"松坂世代(1980年4月2日から1981年4月1日までに生まれた世代)"の2学年上にあたる五十住。同世代の松坂が見せる復活劇から、大きな勇気をもらっているという。

「松坂さんは、同世代のスーパースター。そのスターが過去の栄光にすがらず、死にもの狂いで戦っている。微力ながら、その戦いに携われているのはこの上ない喜びですし、『まだ夢を見ていいんだ』と自分自身も励まされている気持ちです」

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