2018.07.19

中村奨成ともうひとりの覚醒。
「カチカチバット」が悩める球児を救う

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

【連載】道具作りで球児を支える男たち カウンタースイング・後編

 昨夏の甲子園で最多本塁打記録を更新した、中村奨成(広陵→広島カープ)が使用していたことで話題となった「カウンタースイング」は、開発者である野田竜也(のだ・たつや)の「息子たちのホームランが見たい」という親心から生まれたものだった。

 その願い通り、広陵から大学に進んだ野田の長男がホームランを放ち、野田の夢は成就した。そんな野田の元に広陵の中井哲之(てつゆき)監督から連絡が届いたのは、長男が広陵を卒業してから2年が経った2015年のことだった

(前編はこちら>>)

※カウンタースイングとは

 可動式のコマがふたつ搭載されている素振り専用のバット。スイングと同時にふたつのコマがバットの根本からヘッドに移動して音が鳴る仕組みで、その”音の回数”でスイングの良し悪しが判断できるようになっている。

 トップからタイミングよく切り返せると、ふたつのコマは密着した状態でバットの根本に残る。そしてスイングと共に移動してヘッドでコマを叩くことになり、後頭部で「カチッ!」と1回音が鳴る(これを「タマった状態」と呼ぶ)。反対に、「タマっていない」スイングだと、ヘッドにふたつのコマが分離しながら飛んでいき、「カチッ、カチッ!」と2回音が鳴る。

上からカウンタースイングの「現在HP上で受注しているオリジナルカラー」、「廃材を用いて作った試作品(初期)」、「最新のカラータイプ(現在は受注停止中)」 写真提供:野田竜也 広陵の中井監督から連絡を受けてグラウンドを訪れた野田竜也は、そこで当時1年生だった中村奨成と初めて言葉を交わす。

「中井先生から連絡をもらって、カウンタースイングの説明に行きました。そこで『今年おもしろい1年生が入ったんだよ』と紹介されたのが奨成だった。素振りを見せてもらったんですが、まだまだスイングに改善点が多かったし、全体的な粗さも目立っていました。このときに『こう使うんやで』とカウンタースイングについて説明させてもらいましたが、その仕組みは半分くらいしか理解できていなかったと思います」