大学球界の「完全試合男」は、
憧れの菅野が待つプロに向けてリスタート

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 あの男がようやくマウンドに戻ってきた――東海大の青島凌也(4年)が、6月11日の全日本大学野球選手権の九州産業大戦で1点ビハインドの8回裏二死からマウンドに立った。

 昨年は大学日本代表に選ばれるなど大きく飛躍。今シーズンはエースとして期待を集めていた。しかしケガの影響もあって、リーグ戦はわずか1試合にリリーフしたのみ。それだけに思うところはあった。

久しぶりに公式戦のマウンドに上がった東海大・青島凌也久しぶりに公式戦のマウンドに上がった東海大・青島凌也 青島の名前を聞いて、熱心な野球ファンなら、2016年秋に横浜市長杯で達成した完全試合を思い出すかもしれない。コーナーを突くストレートにカットボール、スライダーを駆使して打ち取る姿は、エースそのものだった。ただその日、青島は絶好調ではなかった。

「今だから言えますけど、あのときは秋のリーグ戦から調子がよくなかったので、あまり自信はありませんでした」

 弱気になりかけていた青島のプライドに火をつけたのが、相手チームでプレーする高校の後輩のひと言だった。

「当日、国際武道大に入学した(東海大)相模の後輩たちがあいさつに来たんです。軽い感じで『今日は青さんから打たせてもらいますよ』と。その言葉が引っかかって......。『野球って、そんなに甘いものじゃないだろう』って。

 親しい関係だからこそのあいさつだったと思います。彼らは甲子園で優勝したメンバーだし、大学でも1年から主力で試合に出て結果も出している。でも、僕も大学で必死にやって、ようやく先発を任せてもらえるようになったんです。『高校時代の僕じゃない』というところを見せないといけないと思いました」

 青島の投球は冴え、10者連続を含む18奪三振を記録。つけ入る隙のない内容で完全試合を達成した。

「完全試合を意識したのは6回ぐらいからです。ゾーンに入ったような感じでした。いつもなら攻守交代のときはハイタッチとかをしながら気を高めてベンチに戻るのですが、周りも気を遣ってくれたのか、ハイタッチもせずにすぐにベンチに戻って試合を見ていました。目の前の1球に集中していました」

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