大学選手権で唯一の国立・広島大は、なんで全国大会に出るほど強いのか (2ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue kota

 捕手として投手陣を牽引した主将の國政隆吾(くにまさ・りゅうご/4年)も「投手陣の成長が優勝をたぐり寄せた」と語る。

 広島大の選手たちは、指導者に手取り足取り技術を教えられたわけではない。

 就任1年目の毛利祐太監督は、仕事の都合上、基本的に週末のみの指導となる。平日の練習は、前出の投手担当の藤田、野手担当の服巻茂樹(はらまき・しげき/4年)の学生コーチ2名が中心となって進めている。そのため、選手個々の"自主性"が大きな意味を持つようになる。藤田は言う。

「僕も"学生コーチ"という肩書をいただいていますが、『こうしろ、ああしろ』と選手たちに押し付けることはしません。選手側の『こうなりたい』という目標をもとに、できるだけ長所を伸ばし、改善すべきところがあれば話し合う。なので、コーチの僕だけでなく、選手たちも投球動作や体の構造についての知識が必要になってきます」

 野球の技術書はもちろん、SNSなども活用し、知識の増強を図っていく。その繰り返しのなかで、個人個人の"コーチング"の目も養われ、選手間でのアドバイスもより具体的なものになる。リーグを代表する絶対的エースに成長した中田も、この環境で飛躍したひとりだ。

 山口県下有数の進学校・宇部高3年の夏は、県大会の3回戦敗退。全国的には無名の存在だったが、入学以降の取り組みで体重は10キロ以上増え、130キロ中盤だったストレートの最速は148キロを計時するまでに成長した。広島大の環境について、中田は以下のように説明する。

「ブルペンや試合で投げている姿を長く見ているので、(投手同士が)お互いに感じたことはどんどん伝えるようにしています。自分も『予備動作の段階で力が入りぎている』という意見をもらって、修正につなげることができました。投手陣全体が『野球を勉強しよう』という意識が高いので、ほかの投手からのアドバイスに耳を傾ける雰囲気ができています」

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