プロ野球を席巻する「富士大」出身の
選手たち。なぜ彼らは成功するのか

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 5月9日、プロ野球セ・パの月間MVPが発表され、パ・リーグでは、投手で多和田真三郎と野手で山川穂高(ともに西武)が選出された。この2人はともに富士大(岩手)の出身である。さらに侍ジャパンでも活躍を遂げた外崎修汰(とのさき・しゅうた)、阪神の先発ローテーションの一角を任されている期待の若手右腕・小野泰己(たいき)も同大の出身だ。

 なぜ、富士大の選手たちはプロの世界で大きく羽ばたいていくのか。そのルーツを探りに今冬、岩手県花巻市にある富士大へ足を運んでみた。

(写真左から)鈴木翔天、豊田監督、楠研次郎、佐藤龍世(写真左から)鈴木翔天、豊田監督、楠研次郎、佐藤龍世 1月に訪れたグラウンドは一面銀世界で雪に埋もれていた。「これでもいい方ですよ、昔はもっと雪多かったですから」と語るのは豊田圭史監督だ。

 神奈川・武相(ぶそう)高から富士大に進学して投手として活躍。社会人チームのフェズント岩手で現役を引退した2009年から母校の投手コーチとしてチームに戻り、2014年からは監督を務めている。自身も入学当初はその雪の量の多さと、12月から2月にかけて3カ月もグラウンドで練習ができないことに驚いた。

 チームが変わり始めたのは、2005年に現在法政大で監督を務める青木久典氏がコーチに就任してからだという(その後、2009年から2013年まで監督を務めた)。「練習内容もそうですし、生活での身だしなみや挨拶からすごく変わりました」と豊田監督は振り返る。

 こうした意識改革や環境面の整備が実り、北東北大学リーグの強豪校となり、全日本大学野球選手権の常連となっていった。

 豊田監督はそのチームを引き継ぎ、現在リーグ戦の連覇は8にまで伸びている。今年も左腕の鈴木翔天(そら)や三塁手の佐藤龍世がドラフト候補に挙げられており、全日本大学野球選手権への出場を目指している。

 豊田監督は言う。

「選手に対して大事にしていることは、自覚を持たせて、役割をしっかり把握させることです。選手との年齢も近く(豊田監督は34歳)、そのなかでコミュニケーションを図っています」

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