2018.04.06

勝負勘は「鈍っとる」。71歳名将が
大阪桐蔭にリベンジする日はくるか

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ベンチで仁王立ちする智弁和歌山・高嶋仁監督が、攻撃時にいつも行なうしぐさがある。体の前に両手で小さく円を作った後、右の拳を握って「打て」という動作をするものだ。これがいつものお決まりなのだが、初戦ではちょっと違った動作が見られた。両手で小さく円を作った後、右手を指先まで伸ばし、外野のスタンド方向へ向けたのだ。

歴代1位となる甲子園通算67勝を誇る智弁和歌山・高嶋仁監督(写真中央)

 熱心な高校野球ファンなら、このしぐさを見てある監督を思い出すだろう。両手を指先まで伸ばし、外野方向へ向かって両腕を伸ばす動作。これを頻繁にやるのが、大阪桐蔭・西谷浩一監督だ。片手と両手の違い、アクションの大小の違いはあるが、同じ動き。高嶋監督に「西谷監督と同じじゃないですか」と言うと、返ってきたのはこんな答えだった。

「あれはオレが先にやっとったんや。向こうがマネしたんや」

 西谷監督おなじみの動作が、自分の"パクリ"だと言うのだ。ことあるごとにマスコミにも「(大阪)桐蔭と当たるまで負けられん」「桐蔭に勝つまでやめられん」と言ってきた高嶋監督だが、こんなところにも大阪桐蔭、そして西谷監督を意識していることがうかがえる。

 意識するのも無理はない。昨年の智弁和歌山は、春の近畿大会、夏の甲子園、秋の近畿大会と公式戦はすべて大阪桐蔭に敗退。しかも、夏は1-2、秋は0-1と惜敗だった。勝てるチャンスがありながら、最後はやられてしまう。なかでも、高嶋監督が最も悔しかったのが昨年夏の甲子園。敗戦後のお立ち台で、こう言っていた。

「アカン。勘が鈍っとる」

 そう振り返ったのは4回の攻撃。1対1の同点に追いつき、なおも一死満塁のチャンスで、代打を送らず無得点に終わったことだった。この試合、初戦で本塁打を放っている主砲・林晃汰が右ヒジ痛でスタメンから外れていた。

「後半にチャンスが来ると思っていた。そのときまで林を取っておこうと。そしたら、最後までチャンスが来んかった」

 結局、林を代打に送ったのは9回表一死走者なしの場面。センター前ヒットを放っただけに、余計に後悔は大きくなった。