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バットを刀のように。花咲徳栄の
「サムライ」西川愛也が放つ必殺打撃 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 西川の構えはグリップの位置が低い。これは肩に力が入らないようにするためだという。ゆったりと軸足に体重を乗せ、グリップを高い位置に引き上げてトップをつくり、しなやかにスイング。その流れるような一連の動作のなかで力感を感じるのは、インパクトの瞬間だけだ。

 埼玉大会では、ある試合の終盤に岩井監督から「もう1点欲しい」とリクエストを受け、あっさりと変化球を三遊間に流してタイムリーヒットを打ってみせたこともあった。

 本人も「ランナーがいる方がいつも以上に集中できる」と語るが、大事な場面になればなるほど、肩の力がほぐれて伸びやかなスイングができる。だからこそ、「簡単」に見えてしまうのだろう。

 西川という打者が、もはや「高校生」という次元にいないことは間違いない。2年夏終了時点では3本だった高校通算本塁打も、現在は30本。一発長打の怖さも出てきた。2年春に右大胸筋を断裂し、現在も全力でのスローイングはできないが、そんなマイナス要素を打ち消すだけの魅力がある。

 4万7000人を飲み込む甲子園球場という大舞台でも、普段と変わらず、いやいつも以上に伸びやかな打撃を披露する西川は、こんなことも言っていた。

「バッターボックスに入ると、集中しているので応援も一切聞こえません」

 やはりこの男は「サムライ」なのだと、あらためて実感した。

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