前橋育英の「神がかり男」。野球は高校までゆえ、運も力も出し尽くす
その数字を初めて見たときは、我が目を疑った。
14打数3安打10打点──。
これはある選手の地方大会での通算打撃成績である。
安打数に対して打点数が違和感を覚えるほどに多い。打率こそ.214と低いものの、ポイントゲッターとして素晴らしい成績であることは間違いない。さらに驚くべきことに、この選手は本来つなぎ役である2番打者であり、3安打はすべてシングルヒットである。
群馬大会では3安打ながら10打点を挙げる活躍で甲子園出場に貢献した前橋育英・堀口優河 そして不思議なのは、このような数字を残した選手があまり話題にならず、スルーされているように感じることだ。
「群馬では『ラッキーボーイ』とか、そこそこ言われていたんですけどね」
その選手、前橋育英の堀口優河は真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。チーム内の選手ではどうしても皆川喬涼、丸山和郁、吉沢悠、根岸崇裕の「140キロカルテット」に注目が向き、堀口が報道陣に囲まれることはない。
「勝てばいいかな、と思っています。他にもいろいろといい選手はいるので。自分は打てなくても、バントとかで次につなげることが仕事だと思っています」
得意技はバントと守備。端正な顔立ちと反比例した地味な役回りが、堀口の存在感を希薄にさせているのかもしれない。しかし、堀口が群馬大会で記録した10打点は、その内容を知れば知るほど興味深い。なにしろ10打点中、9打点は準々決勝以降の3試合で記録したものなのだ。
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