「滞空時間7秒14」の大飛球に見た、
早実・清宮幸太郎のスケール

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 その打球が打ち上がった瞬間、明徳義塾のセンターを守っていた中坪将麻は「ホームランだ」と思ったという。

「走って追いながら『フェンスギリギリだろうから、登って捕ろうかな』......と考えていたら、思ったより打球が伸びなくて......」

 一度はフェンス近くまでダッシュした中坪は、そこから意表をつかれたように踵(きびす)を返して、フェンスの手前で飛球を待った。だが、今度は打球が上空からなかなか落ちてこない。

「全然落ちてこないな......と。あそこまで高いフライは、なかなかないと思います」

初戦の明徳義塾戦で4打数1安打だった早実・清宮幸太郎初戦の明徳義塾戦で4打数1安打だった早実・清宮幸太郎 ようやく落ちてきた打球を中坪はズシリと重そうに捕球した。この清宮幸太郎が放った滞空時間の長いセンターフライは、バットに当たってからグラブに収まるまで、実に7秒14もかかったという。

 野球のあらゆるプレーをストップウオッチで計測しているライターのキビタキビオ氏は、清宮の滞空時間のタイムについて驚きを隠さない。

「私は打球の滞空時間のタイムを計る際に、6秒以上を『聖域』と呼んでいます。聖域を超えるような選手は、プロに挑戦できるだけのパワーがあると言っていいでしょう。ところが、清宮くんの7秒14は聖域をはるかに上回る数字です。高校生で7秒を超えるタイムを出したのは、私が計ったなかでは大阪桐蔭時代の平田良介選手(中日)の7秒64、中田翔選手(日本ハム)の7秒10。清宮くんはそこに肩を並べました」

 そして恐るべきは、清宮自身はこの大飛球のことを「打ち損じ」と振り返っていたことだ。

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