八重高か八重商か。石垣島の野球少年たちの、それぞれの決断 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 その裏、八重高は八重商のエース、サウスポーの黒島志門に襲いかかる。トップバッター、2年生の川満拓也が、いきなりライト線へツーベースヒットを放った。立ち上がり、コントロールに苦しむ黒島からさらに2つのフォアボールを選んで、ツーアウト満塁のチャンス。ここで7番の与那嶺匡がライト線へ流し打ったものの、八重商のライトを守るキャプテンの仲嵩勇雅があらかじめライン寄りに守っており、八重高は先制点を挙げることはできなかった。

 八重高のベンチには、3年生の川満龍馬がいた。背番号は17。試合開始早々、いきなりツーベースを放った1番、セカンドの川満拓也は弟だ。ベンチから見る相手の八重商には石垣二中時代のチームメイトが何人もいる。エースの黒島、セカンドの安里郁哉、サードの大濱安音夢、ショートの平良桐哉……しかし川満兄は、甲子園を目指して八重商に進んだ仲間たちとは違う道を選んだ。石垣二中からひとりだけ八重高を選んだ理由について、母の妙子さんは「八重商の厳しい練習は自分には合わないと思ったんじゃないですか」と笑っていたが、川満兄はこんなふうに言っていた。

「中学3年のとき、ひとりで沖縄本島に来て八重高の試合を観たんです。ベスト4まで勝ち進んだ年だったんですけど、そのときの八重高がすごくカッコよくて……自分も絶対に八重高から甲子園に行きたいと思いました」

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