【高校野球】大阪桐蔭センバツ初V。
甲子園を味方につけた藤浪晋太郎の圧巻の投球

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

センバツでは5試合40イニングで41三振を奪った藤浪晋太郎センバツでは5試合40イニングで41三振を奪った藤浪晋太郎 初戦の花巻東戦で150キロをマークして12奪三振の好投を見せた大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎は、ビッグ3の一角・大谷翔平との直接対決を制したことで一気に名を上げた。2回戦の九州学院戦では、「バッティングは全然自信がない。ストレートをたまたま振ったら当たった」と公式戦初本塁打。甲子園で実力以上のものを発揮して勢いに乗った。

 そしてハイライトは準々決勝の浦和学院戦。1対1で迎えた7回、ふたつのファウルフライ落球などもあって無死満塁のピンチを迎える。しかし、ここから圧巻のピッチングを披露。「今までこれだけ厳しい場面はなかった。でも、自分もフォアボールなどミスがある。ミスで一喜一憂していたらピッチャーはできない」と、強い気持ちでバッターに向かった。7~9番を三者連続三振に仕留め、見事ピンチを脱出。8番・石橋司の初球にはセンバツ史上最速タイとなる153キロをマークした。

「ノーアウト満塁からのあの三者三振は甲子園の雰囲気がさせたもの」と有友茂史部長が口にしたように、甲子園の大観衆が藤浪の背中を押した。8回にふたつの失策と自らの暴投で勝ち越しを許したが、「藤浪が今大会のナンバーワン投手。もっと見たい」という雰囲気が劇的な展開を演出。9回一死一塁から安井洸貴の二塁打と白水健太の安打で劇的な逆転勝利を収めた。

 準決勝では3試合16盗塁の健大高崎を森友哉の強肩で封じて一蹴。迎えた決勝の光星学院戦、藤浪は初回から毎回走者を背負う苦しい展開を強いられたが、まったく慌てた様子はなかった。6回に1番からの上位打線を三者凡退に抑えると、7回には走者がいない場面でもセットポジションから投球。これは体の開きを抑えることを意識したもので、今大会5試合目ではじめてのことだった。

「中盤以降は力を抜くことと、上から腕を振ることだけを考えた」と藤浪。このイニングでしっかり修正し、8回からは再びワインドアップに戻すなど、常にマウンドで余裕があった。昨年までは"ここ一番"に弱く、終盤に崩れることが多かったが、6回以降は光星学院打線を3安打無失点に抑えた。甲子園で得た自信が藤浪をひとまわり大きくさせた。

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