ヤクルトOB捕手・八重樫幸雄は、中村悠平の「ストレートの使い方」を絶賛。WBCではメイン捕手としての起用に期待

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

「オープン球話」連載第106回 
ヤクルトとの正捕手・中村悠平の評価とWBCでの期待

(105回:日本シリーズで「崖っぷち」だったオリックスに勢いが傾いた瞬間。両ベンチの「わずかな差」にも気づいていた>>)

侍ジャパンの強化試合では佐々木朗希(右)ともバッテリーを組んだ中村悠平侍ジャパンの強化試合では佐々木朗希(右)ともバッテリーを組んだ中村悠平この記事に関連する写真を見る

ベンチからの信頼を取り戻した「燕の正捕手」

――2022年シーズンから背番号「27」を背負い、侍ジャパンの候補にも選ばれている中村悠平選手について伺います。昨年、今年のセ・リーグ連覇において、正捕手の中村選手の存在はとても大きかったと思います。現役時代にキャッチャー、引退後はバッテリーコーチも務めた八重樫さんから見ていかがですか?

八重樫 リードが大きく変わりましたよね。真中満監督時代の2015年に、石川雅規と中村が最優秀バッテリー賞を獲ったあと、中村とたまたま会うことがあって「本当によくやっているな。でも、ここからが本当の勝負だぞ」と本人に言ったんです。でも、翌年からは単調なリードで、同じ失敗ばかりを繰り返していました。それで「一体、どうしたんだ?」と思ったことがあったんですよね。

―― 一体、何があったのですか?

八重樫 本人に聞いても語りたがらなかったけど、ベンチからサインが出ていたこともあったようなんです。そうなると、キャッチャーとしては「自分は信用されてないんだな」という気持ちになりますよね。自分の責任でサインを出して打たれたならば、そこからいろいろなことを学べるんです。

 キャッチャーにはそれぞれのリードがあっていい。でも、ベンチからサインが出て、それを投手に伝達するためだけに指だけ出しても、自分の考えとは違うサインを出しているから身にならないんですよ。でも、昨年と今年は、ほぼすべてを中村に任せていたと思います。

――それだけ、ベンチからの信頼が厚くなったということでしょうか?

八重樫 中村が自信を取り戻したから任されているのか、任されたことで自信を取り戻したのかはわからないけど、特に今年は自信を持ってリードをしていましたね。キャンプでも、この2年間は古田(敦也)臨時コーチにさらに鍛えられて、自分でリードをやっていると思うんだけども、いろいろヒントを得たんじゃないですかね。

――具体的には、どのような変化が見られますか?

八重樫 ストレートをすごくうまく使うようになったと感じますね。バッターの反応、対応をよく見ていると思います。少し前までは、ちょっと困ったら変化球を繰り返してフォアボールになり、ピッチャーが苦しくなって打たれるケースが多かった。だけど、昨年から今年にかけてはそういう場面でのストレートの使い方がよくて、真っ直ぐで見逃し三振ということもかなり増えているはず。相手がクリーンアップでも、簡単にポーンとストレートで三振をとっていましたね。

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