ヤクルトOB捕手・八重樫幸雄は、中村悠平の「ストレートの使い方」を絶賛。WBCではメイン捕手としての起用に期待 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

キャリアを生かして、さらなる成長に期待

――かつて、大矢明彦さん、古田敦也さんが着けていた背番号「27」を、今年から中村選手が受け継ぎました。この点についてはいかがですか?

八重樫 今年32歳になって、これから体はボロボロになっていって肩も衰えてくるかもしれないけれど、キャッチャーは年齢を重ねるほど「経験」が大きな武器になります。昨年、今年とセ・リーグ王者となったことで、さらに多くのことを学んだと思うし、まだまだ伸びしろも大きいと思います。大矢さん、古田のいいところを受け継いでほしいですね。

――これからの中村選手に期待すること、望むことはありますか?

八重樫 ここ2年は激務が続いたでしょうし、今年はオープン戦での故障もあって開幕に出遅れたので、ケガだけは気をつけてほしい。オフはきちんと休んで、きちんとリハビリをして、じっくり体を休めてほしいな。僕が見る限り、スローイングもキャッチングも年々よくなっているし、フットワークにも衰えは見られない。だから、コンディション維持だけがポイントですね。

――ヤクルトのキャッチャーという点では、今年はプロ2年目の内山壮真選手の台頭もありました。これも、中村選手にとってはさらなる刺激となっているのではないでしょうか?

八重樫 いい刺激にはなっているとは思いますけど、まだまだ圧倒的に中村のほうが上ですよ。中村のこれまでの経験値を考えると、1、2年の活躍で中村を抜くのは無理ですね。ただ、ヤクルトとしてはすごくいい関係が築けていると思います。これから数年かけて内山が経験を積んでいくなかで、中村との世代交代を図れますからね。

――八重樫さんから見て、中村選手に続く正捕手候補の筆頭は内山選手ですか?

八重樫 そうですね。内山はいいと思います。今年、彼は石川雅規と組むことが多かったけど、石川は年下でもキャッチャーを立てることができるから、内山もいい勉強になっているでしょう。中村がいるから、内山をじっくり育てることができる。ヤクルトにとっても、本人にとっても本当にいい状況にあると思いますね。

【プロフィール】
八重樫幸雄(やえがし・ゆきお)

1951年6月15日、宮城県仙台市生まれ。仙台商1年時の1967年夏の甲子園に出場。1969年夏の甲子園では「4番・捕手」としてベスト8進出に貢献した。同年のドラフトでヤクルトから1位指名され、プロ入り。1984年に自己最多124試合18本塁打を記録。翌年には打率.304、13本塁打でベストナインにも輝いた。現役23年間で通算103本塁打、401打点。引退後は2軍監督、1軍打撃コーチを務め、2009年からスカウトに転身。2016年11月に退団するまでヤクルトひと筋だった。

【著者プロフィール】
長谷川晶一(はせがわ・しょういち)

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て、2003年からノンフィクションライターとして、主に野球をテーマとして活動。2005年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書として、1992年、翌1993年の日本シリーズの死闘を描いた『詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『プロ野球語辞典シリーズ』(誠文堂新光社)、『プロ野球ヒストリー大事典』(朝日新聞出版)。また、生前の野村克也氏の最晩年の肉声を記録した『弱い男』(星海社新書)の構成、『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説も担当する。

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