【自転車】片山右京が「ツール・ド・おきなわ」に挑戦する理由 (3ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira  photo by AFLO

 今回、ツール・ド・おきなわ参戦を決めた背景には、特に何か大きな理由があるわけではなく、「五十肩が治って体調が良くなったから(笑)」と、冗談めかして話す。

 しかし、よく話をきいていくと、やはりその裏には、今後の自分自身とチーム運営に向き合っていくためにあらためて覚悟を決める潔斎(けっさい)のような意味合いもあるようだ。

「言葉じゃうまく説明できないけど、若いころにF1へ行ったりエベレストの頂上を目指した前の日に、怯えを自分のなかから払拭して、言い訳をせず一歩目を踏み出したときのように、自分が年を取って弱くなっている部分をもう一回鍛えて、『よーし、もう一回やってやる』と活を入れるための覚悟……じゃないんだけど、なにかそういう『禊(みそ)ぎ』のようなものに近いところはあるのかもしれないですね。

 今回の挑戦が最後なのか、そうじゃないのかはわからないし、たぶんそんなことの繰り返しで死ぬまで葛藤をしているんだろうけど、少なくとも現時点では、自分に足りなかったのはそういう『頭や気持ちでは頑張っているつもりかもしれないけれど、本当はそうでもないんじゃないか?』っていうことなんだろう、と。

 だから、自分では若い子たちを応援しているつもりだったけど、『おまえ、実はそれは口先だけで、本当はたいして苦しんでないじゃないか。もっともっと頑張らないと、この先、皆に応援してもらうどころか、会社だってチームだってヤバい時が来るかもしれないぞ』と思う自分もいて、もしも将来にそんなときが来ても、はたして苦しみや痛みに耐えられるだろうか、そのときに笑っていられるくらい自分は強くあることができるだろうか。

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