【新車のツボ112】
フォード・フォーカス試乗レポート (2ページ目)
専門的にいうと、オートマがこれまでのツインクラッチ式から昔ながらのトルクコンバーター式にあらためられたのも、さすがの目利き......というほかない。駆動効率や変速の小気味よさではツインクラッチのほうが有利で、技術的にもこっちのほうが新しいし、カタログ的にも見映えがいい。しかし、変速の滑らかさや扱いやすさをマジメに突き詰めると、まだまだトルクコンバーター式に分がある部分も多く、フォードはそこに目をつけた。エンジンもパワフルで、右足ひとつの速度微調整もドンピシャ。うーん、これまた完璧なツボ!
また、フォーカスは前記のように最新ライバルよりちょっと重いことも、こと乗り味や快適性ではいい方向に働いている。最新の軽量設計でも機械で測定するとフォーカスより静かなのかもしれないが、フォーカスの静かさはたっぷりの質量で抑え込んだ......いわば"潤いのある静かさ"というべきか。ちょっとヒイキ目があるのは否定しないが、ワタシのような昭和世代のクルマ好きには、こういうフォーカスの味わいはなんとも愛おしいツボである。
まあ、さすがに燃費については、フォーカスは軽量なライバルにちょっとゆずるし、シツコイようだが日本でのフォーカスはあまりにカルト(!)な存在である。なので、リセールバリューまで含めると、皆さんに手放しでオススメするのは気が引けるんだが、とにかく運転が三度のメシよりも好き......というなら、フォーカスにツボを突きまくられることは保証する。
【スペック】
フォード・フォーカス・スポーツ+エコブースト
全長×全幅×全高:4385×1810×1470mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1420kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1497cc
最高出力:180ps/6000rpm
最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:14.3km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:349万円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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