【新車のツボ111】スズキ・ソリオ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 スズキの日本市場におけるメシの種は、もちろん、圧倒的に軽自動車(以下、軽)である。ただ、「軽は便利だけど、さすがに小さすぎる」とか「とにかく軽は生理的にイヤ」、あるいは「軽を卒業してプチ贅沢したい」、そして「どうしても5人乗りの必要がある(軽の乗車定員は最大4名)」といったニーズに応えるべく、スズキは白ナンバーのコンパクトカーを2台用意している。

  

 その1台がスイフト(第2回参照)であり、それとならぶもう1台が、このソリオだ。

 スイフトは世界中で販売されるグローバル商品であり、基本プロポーションも世界的に通用するオーソドックスなもの。しかも、クルマの走行性能にはもっとも厳しい欧州でも一目置かれる走りを目指している。

 ソリオはそんなスイフトとは、ある意味で対照的だ。ソリオはまず基本的に国内専用商品で、いかにも日本的なスーパーハイト軽の"ワイド版"というべきカタチをしている。

 1.2リッターエンジンに追加されているモーターアシストも、スズキが軽では"Sエネチャージ"と呼ぶものと同じ。軽では「ハイブリッドというほどではないので......」と、謙遜してSエネチャージと名乗るくせに、白ナンバーのソリオでは一転して、堂々と"ハイブリッド"の文字がおどる。現在の国内コンパクトカー市場では、売れ筋はハイブリッドばかり。ここで遠慮しては売れるものも売れない......という判断なのだろうが、こういう商売のツボも、日本的といえばとても日本的だ。

 一見すると、スペーシア(第53回参照)の幅を拡げただけに思える点は、新型ソリオは先代と変わっていない。クルマ業界用語でいう"キープコンセプト"そのものである。ソリオにおけるコンセプトのキープっぷりは、ボディサイズにも貫かれている。全長は先代からビタ1mmも大きくなっておらず、全高は燃費(=空気抵抗減)のためもあって逆にちょっと低いくらい。全幅も5mmしか増えておらず、1625mmという全幅は、もはや大半が5ナンバー枠ギリギリ(=1695mm)までは幅広くなってしまった国産コンパクトカーで、もっともスリムなのだ。

 モデルチェンジごとにボディが大きくなるのが今どきの通例なのに、みずからの体形をここまで厳しく縛りつけているのは、ソリオにはすでに「クルマはこの大きさ、このカタチじゃないとダメ」というユーザーがたくさん存在するかららしい。

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