【新車のツボ53】
スズキ・スペーシア 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 新しいスズキ・スペーシアは、軽自動車(以下、軽)では背が高くて大容量のボディに、スライドドアを組み合わせている。ジャンルとしては、ダイハツ・タント、そして今いちばん売れている軽のホンダN-BOXと同じだ。

 このスペーシアの前にも、スズキには大容量スライドドア軽があった。「パレット」という。パレットはタントにはない両側スライドドア(タントは支柱レスの片側スライドドア)という独自の売りがあったのだが、売り上げでは最後までタントに迫ることはできず、N-BOXが出てからはさらに下降してしまった。クルマとしての機能性は、どちらのクルマにもほとんど劣らなかったのに......である。

 パレットが大容量系スライドドアのトップ銘柄になれなかった理由を、スズキはずばり「女性ウケが悪かったから」と分析した。

 というわけで、スペーシアの商品企画開発チームに、スズキで初めて女性(Kさんという)が起用された。Kさんはエンジニア出身でもデザイナー畑の人でもなかったが、使い勝手......すなわち内装の細かい収納アイデアで「女性のツボ」を突く役割が与えられた。

 Kさんは若いママを中心とした女性にインタビューしまくり、実際に女性が使っているクルマを調べまくり、ときに収納アイデアを段ボールで試作して「そんなものムリ、内部には○○という大切な機械があるから」と渋るエンジニアを説得しまくった。

 こうして完成したのがスペーシアである。Kさん自慢のアイデアはたくさんあるが、その代表格にして象徴的なひとつが、助手席前のボックスティッシュホルダー。女性のクルマにティッシュのひとつもあるのは当たり前。それはオトコの私も理解できる。でも、ティッシュくらい、その辺にテキトーに置いとけよ......が私の本音である。

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