【新車のツボ52】
フォード・フォーカス 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ハンドリングだの操縦性だの、コーナリングがあーだこーだ......と口うるさいクルマオタクたちは、フォードにいつも一目置いている。もうちょっと正確にいうと、かつて"欧州フォード"などと呼ばれていたヨーロッパで開発されるフォード車のことだ。

 フォードの大本営はもちろんアメリカのデトロイト。しかし、フォードは昔からヨーロッパにもクルマをゼロから企画・開発・生産できる体制を整えており、そこ(=欧州フォード)ではつい最近まで、アメリカとは実質無関係の"ほぼ完全な欧州車"をつくっていた。実際、フォードはヨーロッパ市場にも深く根づいていて、フォルクスワーゲン(VW)やルノー、オペル(=実体は欧州ゼネラルモーターズ)などと常にベストセラーを競ってきた。欧州人の多くは、欧州フォード製品はあくまで欧州車として見ているのだ。

 フォーカスは現在のフォードでも屈指のグローバル商品で、世界120ヵ国以上で販売される。生産は世界7ヵ所で行なわれており、日本で売られるフォーカスはタイ工場製だ。ただ、これで3代目となるフォーカスの開発は今も昔もドイツが中心で、販売規模や生産台数でもメイン市場はヨーロッパである。

 なんにつけても「グローバル、国際標準、世界共通化」がさけばれる昨今は"欧州フォード"という言葉自体が死語っぽいが、フォーカスに乗ると「これってやっぱり欧州フォードだよなあ」と思わざるをえない。どんなに荒れた路面でも涼しい顔で、心おきなくブッ飛ばせそうな安定感は、世のクルマオタクがイメージする"よくデキた欧州車"のツボそのものだからだ。

 このクラスの欧州車というと、日本ではVWゴルフがもう圧倒的な存在である。まあ、地元ヨーロッパでもゴルフが超優等生なのは間違いなく、価格や燃費、所有欲を満たすイイモノ感......まで含めた総合力はゴルフがトップだろう。かといって、欧州人にとってのゴルフが日本と同じように、何人(なんぴと)も寄せつけない絶対的な存在か......というと、そうとも言いきれない。特に"走り"という面では「このクラスでアシのいいクルマ、ハンドリング自慢といえばフォーカスっしょ!」が彼らの一般常識(?)である。

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