【新車のツボ110】VWパサート試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 VW(フォルクスワーゲン)と聞いて、私を含む日本人の多くが最初に想起するのは、ゴルフ(第64回参照)だろう。ゴルフに続いて日本でよく見かけるVWといえば、ひとまわり小さいポロである。

 今回取り上げるパサートは、日本で販売される乗用車型のVWでは、もっとも大きくて高級なセダン/ステーションワゴンだ。パサートも初代から40年以上の歴史があり、歴代モデルすべてが正規輸入されてきたから、それなりにポピュラーな輸入車ではある。

 ただ、日本でのVWは「大きすぎないハッチバック」というイメージが強く、パサートはどうしても日本で大量に売れる商品ではなかった。また、パサート級ともなると、サイズや価格では、ベンツビーエムなどの主力車種とオーバーラップする。この価格帯の輸入車は日本だと"高級ブランド品"という意味合いが強く、なんだかんだいっても大衆ブランドのVWは分が悪い。

  

 ところが! 2014年、パサートの世界販売数は約110万台で、なんとゴルフのそれよりも多かったという。つまり、昨年のパサートは「世界でもっともたくさん売れたVW」だったのだ。

 その大きな理由のひとつは、世界の主要市場で新型パサートが昨年発売されたこと。そしてもうひとつは、アメリカと中国という世界の二大市場では、ゴルフよりパサートのほうが圧倒的に人気が高いからだ。アメリカ大陸のスケール感ではゴルフなんぞは日本の軽自動車みたいもの(?)で、ファミリーカーとしては小さすぎる。そして、まだまだ「自動車=ステータスシンボル」の中国では、クルマは大きく豪華なほうが好まれる。

 パサートくらいの上級クラスになると、前方のクルマを追いやるくらいの迫力や押し出しのあるデザインが好まれるものだが、パサートは伝統的にあえて"控えめ"であることを独自のツボにしてきた。そうした伝統のデザインモチーフは新型でも健在で、全体に直線基調のデザインで、ヘッドライトも小さめのパサートは、写真では相変わらず控えめに見える。

 ただ、新型パサートの現物は、控えめとは正反対。とにかく高級感のオーラがすさまじい。ボディの折り目は手が切れそうなほどだし、なんのくすみもゆがみもなく周囲の景色を映しこむ高度な塗装品質にも驚く。外装の細部やインテリアなどの部品はもちろん大半が樹脂なのだが、いちいち本物の金属と見まがうほど精緻な輝き。実物のパサートは、もう、"イイモノ"フェロモンがムンムンでむせかえるほどなのだ。

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