【新車のツボ67《特別編》】
東京モーターショー直撃レポート (2ページ目)
【フォルクスワーゲンXL1】
この異様に低くてスリムな2人乗りスポーツカーはコンセプトカーではない。れっきとした市販車である。ただし、販売はヨーロッパのみ250台限定。価格はなんと10万ユーロ(約1370万円!)。おそらく歴代で最も高価なVW(フォルクスワーゲン)である。
ただ、これは速さではなく、驚異の低燃費を売りにする新世代のスーパーカーだ。2気筒ディーゼルのハイブリッドで、カーボンやアルミでかためられた車重は、軽自動車より軽い800kg以下。最高速度は160km/hしか出ないが、かわりに燃費は111km/L!!!!!!
これは素直にスゲー。当たり前だが、最高速300km/hより111km/Lのほうが何倍もインパクトがある。普通に乗るならレトロのほうが萌えるが、やっぱこういう純粋に性能を追求した機能美もまた、マニアにはツボである。空気抵抗を徹底的に突き詰めたスタイルはあの初代ホンダ・インサイトを彷彿とさせるが、その何倍もオーラがある。素直にカッコイイ。こういうものこそ日本メーカーにやってほしかったのに......とも思うが。
【ダイハツ・デカデカ】
これも現時点ではハリボテの純粋なコンセプトカーなのだが、似たようなコンセプトで同名コンセプトカーが出るのは今回で2回目で、デザインは前回よりはるかに現実的になっている。しかも今回はエンジンや燃料タンクなどの現実的なパワートレーンを想定したレイアウトになっていた......。
このデカデカも軽自動車サイズに収まっている。タントやN-BOXなどのスーパーハイト大容量系より全高をさらに10cmもドーンと高くしてあり、室内はもう使いきれないくらいに巨大な箱である。
こんだけ幅がせまくて背が高いと、走りは不安だが、最近の技術レベルなら、市街地や高速をトコトコ走るくらいなら問題なさそう。
「クルマは飛ばしてナンボ!」という私のツボにはまったく相容れないが、「高速でもエコランです、それより自転車を積みたい、あるいは自宅がせまいので物置に使いたい!?」という現代ニッポンの生活様式にはドンピシャ。商品化されたら一気に日本の国民車になりそうな予感もある。
......というわけで、東モでツボにきた4台を無作為に選んでみたら、結局のところ、IDxやハスラークーペのような「レトロ型」と、XL1やデカデカのように「一芸追求型」になってしまった。べつに偉そうにいうわけではないが、いまの時代に魅力的なクルマをつくるには、このどちらかの方向しかないのかも。
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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