上村彩子アナが語る北京五輪取材の感動。「ボロボロ泣いた」というフィギュアスケート選手の演技とは (4ページ目)

  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

宇野昌磨と鍵山優真にインタビュー

 また、フィギュアスケートでは、男子個人で銀メダルの鍵山優真選手と、銅メダルを獲得した宇野昌磨選手にインタビューすることができました。今大会を「裏で支えてくれた人物」をテーマに話を聞いたのですが、鍵山選手はやはり、父でありコーチでもある正和さんの存在を話していましたね。

 ここまでの道のりを二人三脚で歩んできたふたり。正和さんからは試合のたびに「悔いが残らないように」と言われていたそうで、鍵山選手はその言葉を胸にリンクに上がり続けていると言います。私も団体戦から見ていましたが、すごく楽しそうに五輪に臨んでいるなと、演技からすごく伝わってきました。

 正直、彼のショートプログラムが始まる時はそれほど会場が盛り上がっていなかったんです。しかし、いざ始まってみると、鍵山選手の演技と『When You're Smiling』というノリのいい曲がマッチして、会場の雰囲気がガラッと変わり、手拍子が大きくなって、彼のスケートに観客がどんどん魅了されていくのがわかりました。演技後にはもう、みんな鍵山ファンになっているなと感じましたね。

 正和さんはフリーを終え、メダルが決まった瞬間、目から少し涙があふれていて。自身が2大会連続で出場しても届かなかった五輪でのメダルを、息子が代わりに獲ってくれた。本当にうれしかったんだなと、マスク越しではありますが、喜びの表情が目に浮かぶようでした。

 一方の宇野選手は、少し驚いてしまったのですが、自分の支えになってくれたのは鍵山選手だと話していて。彼が憧れているスケーターが宇野選手であると以前から言っていたことから、「いつまでも特別な存在としてあり続けるために頑張ることができた」と、本人の前で言っていたんです。鍵山選手はすごくうれしかったと思うのですが、あまり表情は変わっていませんでしたね(笑)。

 宇野選手を平昌大会でインタビューした時は、夜中のインタビューということもあり、羽生選手の隣ですごく眠そうにしていてかわいいなと思っていたのですが、今大会では鍵山選手が隣にいるとすごくお兄さんになっていて。この4年間でいろんな経験をしてきたこともあり、その姿や表情からはたくましさを感じました。

 鍵山選手は高校を卒業したあとからは、宇野選手が日本にいる時は中京大学のリンクで一緒に練習する機会を増やしていくそうです。お互いが切磋琢磨しながら高め合い、4年後にはどんな演技を披露してくれるのか。今から楽しみで仕方がないです。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る