陸上界の「エビちゃん」海老原有希選手が考える「日本人の武器」とは? (2ページ目)
取材では、彼女の投てきの正確な技術を見せてもらうために、30m先に設置した丸い的を狙って投げてもらったのですが、これが見事命中。投げる前には、周りで練習をしていた後輩に手拍子をしてもらい、的に当たるとグラウンド中から拍手が沸き起こりました。そんなところにも、彼女が周りの人たちに愛されていることがよく表れていましたし、「この環境で練習をさせてもらっているのはありがたいことですし、楽しくてしかたない」と、海老原選手も周囲のサポートへの感謝を忘れていません。
180㎝近い海外の強豪選手に比べ、164㎝と小柄な体で戦っている海老原選手ですが、体が小さいことを「ハンデだとは思っていない」と言います。
photo by Yamamoto Raita それでも、初出場を果たした09年の世界陸上ベルリンまでは、体を大きくすることを目標にしていたそうです。しかし、そこで予選落ちをして経験して、「外国人選手のように体を大きくして力で投げようとすると、自分の技術やスピードに支障が出る」ことに気づいたそうです。
彼女の持ち味は、助走のスピード。100mのベストが12秒6という俊足を活かす「しなやかな体づくりが必要」と考え直したといいます。また、2010年の日本選手権の後に右足首を捻挫してしばらく練習ができなくなり、「何か違うやり方があるのではないかと考える期間があったことも、重要だった」と語ってくれました。
その成果が、2011年アジア大会(中国・広州)での61m56の日本記録(当時)につながりました。ちなみに、3投目に投げた59m39で優勝が決まっていたため、最後の6投目を投げ終えた海老原選手は、記録を確認しないですぐにスタンドにいるコーチの方を向いて初優勝を喜んだそうです。ところが、どうもコーチの様子がおかしい。そして、掲示板を見るように指摘されて振り向き、電光掲示板を見ると日本記録だったのです。そのときのことを「感動を半分損した」と苦笑いをしながら話してくれました。
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