ベイスターズ激動の1年を収めたドキュメンタリー映像作品が公開 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by ©Yokohama DeNA Bay Stars

 振り返ればいろいろなことがあったシーズンだった。開幕投手を務めエースへの道を歩み始めた今永昇太の胸のすくような快投もあれば、春先には10連敗し最下位に沈むこともあった。また怪我人が続出するなかラミレス監督は奇策とも呼べる采配でチームを浮上へと導いた。枚挙に暇のない数々の出来事を経験しながら、ベテラン、若手関係なくチーム一丸となり、戦い抜いた1年間だった。

 そして、その中心にいたのがDeNAの"巨星"であり、キャプテンとしてチームメイトを照らしつづけた筒香嘉智である。

 昨オフの契約更改で、球団側にメジャーへのポスティング移籍を申し出た筒香。行使する時期は未定ではあったが、その報を聞きつけチームメイトの心に芽生えた筒香への想い。

「今年が最後かもしれない。来年はもういないかもしれない」

 圧倒的なキャプテンシーだった。大黒柱としてプレーにおいてはもちろん、迅速な行動力や心に響く指摘や言葉で年代関係なく影響を与えることのできた横浜史上最高のリーダーだといっても過言ではない。その筒香のラストを予感させた今季、そして来季いなくなるかもしれない現状を鑑み、選手たちに変化が訪れる。

 自覚、責任感、そして献身。

 映画は、真に迫ったリアリティーのもと筒香という偉大なリーダーに軸脚を置きながら、若手選手たちにスポットライトを当て昇華していく。

 終わりとは、始まりを意味する──そんな言葉を想起するストーリーが展開する。

 当然のように筒香やチームメイトの変化を辻本監督はカメラを通し微細に感じ取っていた。

「ついにシーズンが終わるまで、このオフにポスティングを行なうことをカメラの前で明言することはありませんでしたが、撮影中の行動や言動から、筒香選手は"自分を残す"という作業をしていたのかもしれません。球場のなかはもちろん、外で食事をしていても自分のことを差し置いて、とにかくチームのことだけを考えていました。若い選手たちもその想いを肌で感じ、徐々に言動が変わっていきましたし、また筒香選手は裏方さんに対しても、気を遣いながら言うべきことは言い、嫌われ者になっても心底チームをよくしようと常に行動していました。そんな姿の数々が今作では見ることができると思います」

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