ニューバランスが、ランニングシューズの流れを変えた (2ページ目)
ランナーが増えると、ランニングシューズが売れた。ランニングの歴史は、シューズ開発の歴史でもあった。長谷川教授が言う。
「70年代から80年代に向けて、靴のヒール(かかと部分)がどんどん分厚くなる方向に開発が進みました。でも、2006年から2010年にかけて折り返して、今度は薄くなる方向に行っている。これが、ランニングシューズのトレンドの大きな流れです」
このようなシューズの変遷は、実際の走りにどれほど影響するのか。
「スキー板や、サーフボードをイメージすると、道具によってパフォーマンスが変わることを想像しやすいと思います。同じように、ランニングシューズも基本的には"モノ"によって微妙な差がある。一回使うだけなら小さな差でも、ずっと使っていると大きな差になってきます。もちろん、いまのシューズは70年代のものと比べるとダントツにいいですよ」
実は、長谷川教授は"ランニングシューズのかかとが薄くなっていくトレンド"を生み出した、その張本人である。きっかけは、Qちゃんこと高橋尚子だった。彼女の大阪学院大学時代、のちの金メダリストを見ながら当時の長谷川氏はこう思っていた。
「あの子は逸材かもしれん。でもフォームはあかん。理に適った走り方に直したら、もっと速くなるのにな」
ところが、高橋は独自のフォームのままで2000年のシドニー五輪を当時の世界最高記録で優勝。さらに翌年には、ベルリンマラソンで、女性で初めて2時間20分を切る大記録を叩き出すのだ。
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