ニューバランスが、ランニングシューズの流れを変えた
専門家に聞くシューズとパフォーマンス〜ランニング編(1)
「42.195kmを走るのは......少々やりすぎですね。正直、体に悪いです。ただ、競技として、文化としては、チャレンジしたくなりますよね。僕もフルマラソンを走りますよ。でも健康のためだけを考えるならば、ハーフマラソンまでがいいんじゃないですか(笑)」
そう言って笑うのは、スポーツにおける人体の動きを研究するスポーツパフォーマンス分析のエキスパート、龍谷大学の長谷川裕教授だ。
ランニングシューズの歴史的な転換に一役買った長谷川裕教授
世界的に有名なニューヨークシティマラソンの第1回は1970年、セントラルパークを4周するコースに127人が参加し、完走は55人だったが、現在では5万人が集う巨大イベントに成長した。2007年に始まった東京マラソンも、市民ランナー3万人が集まる。
いまや日本のラン人口は、週に1回走る人で572万人(2012年・笹川スポーツ財団の調査)。ランニングがこれほど盛んになったひとつのきっかけは、1978年、ジム・フィックスの「THE COMPLETE BOOK OF RUNNING」が全米で大ベストセラーになったことだった。ジョギングという言葉が広まり、市民ランナーが街中を走りだした。最初は健康維持の「ブーム」だったが、やがて「ライフスタイル」として日常的な風景に定着していった。
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