「株式投資で一番やってはいけないのは...」 投資教育を学ぶ高校野球部生の「人生を豊かにする分散」 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【自分が働く会社の株式は×】

奥野「プロの運用者というのは、他の運用者とポートフォリオの運用成績を競い合っているんだけど、たとえば株式だけで運用しているポートフォリオと、債券だけで運用しているポートフォリオは直接、比較されることはない。なぜなら土俵が違うから。

 でも、株式と債券を組み合わせて運用されるふたつのポートフォリオは、同じ土俵に乗せられているので、それぞれの運用者は、いつ運用成績を比較されてもいいように、株式と債券の組入比率をどのくらいにするかを検討し、リスクの最小化とリターンの最大化を両立しうるポートフォリオを目指そうとする。

 じゃあ、個人はどうなんだ、ということだけど、個人は今のようにほとんど0%の利回りの円建ての債券などに投資する必要は、分散という観点においてもほとんどないと断言してもいいかな。

 だって、社会人になって日本企業で働くとしたら、月々、円でお給料が入ってきて、定年までに獲得する円資金は平均で2億7000万円くらいになる。2億7000万円だよ。これだけの円資産を将来にわたって獲得するのに、わざわざ運用資産の半分を、円建ての債券で運用する必要はないでしょ。

 もし日本企業で働くのであれば、稼いだ給料の一部でアメリカの企業の株式や、日本企業でも海外で収益の多くを稼いでいるような企業の株式に投資したほうが、はるかに人生の分散が効くと思うな。

 あと、株式に投資する時、一番やってはいけないのは、自分が勤めている会社の株式に投資することだね。経営者、企業の幹部であれば、自分のコミットメントを示すために自社の株式を買う必要があると思うけど、単なる従業員にはおススメできないね。

 企業によっては『持ち株会』というものがあって、昔は企業への忠誠心を高めるために、毎月の給料の一部を天引きして、働いている会社の株式を買ったものなんだ。だけどこれ、もし自分の会社の業績が悪化したら、給料は減るわ、株価も下がるわで、何もいいことがない。倒産なんかしたら、もう最悪だよね」

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