「デイトレーダーってカッコいい?」高校の野球部員がイメージする投資家の姿 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【デイトレーダーが重視するのは「思惑」】

奥野「まず、鈴木君の質問から答えると、確かにデイトレーダーと呼ばれている人のなかには、数億円単位でお金を儲けているケースもあるのだけど、それってたぶん、全体の2%とか3%程度の人なんじゃないかな。損をして、『もう二度と投資なんてするもんか』と言いながら、退場していく人も多いんだ。

 確かに、デイトレードも長期投資も、株価の値上がり益で利益を得るという点は同じなんだけど、何と言うか、値動きの質が違うんだ。

 株価が時々刻々と動いているのは、君たちもわかるよね。じゃあ、どうして株価が動くのか。それはふたつの理由が考えられるんだ。

 ひとつは会社の価値が上がること。たとえば世の中の役に立つすばらしい製品を開発したら、大勢の人たちがその製品を買ってくれる。その製品が多くの人の役に立つことで、その会社にはたくさんの感謝のしるし=お金が集まってくる。

 その会社はどんどん売り上げが膨らみ、利益も増えて、偉大な会社に育っていく。そして、株式は会社の利益の一部を得る権利なので、会社の利益が大きくなれば、当然、株価も上がる。

 つまり、会社の価値の向上が、株価の値上がりにつながっていく、というのが第一の理由ね。

 そして、もうひとつの理由が思惑によるもの。

 株式投資で利益を得たいと考えている人は大勢いて、それぞれがいろんなことを考えて、一番儲かりそうな会社はどこなのかと狙っている。

 ひとつの情報が流れると、それを巡って、株価は上がると考える人もいれば、株価は下がると考える人もいる。そういう人たちの『欲望と恐怖』がない交ぜになって、株価は時々刻々と動いているんだ。そして、この小さな値動きを狙うのが、デイトレーダーというわけ。

 ただ、欲望と恐怖による思惑で動いている株価は、さながら心理戦のようなもので、自分以外の投資家が今、何を考えて、どういう行動を取ろうとしているのかを常に先読みして、資金を投じているんだけど、人間の心理なんてそう的確に当てられるものではない。

 もちろん将来、大きく成長する会社を見つけたと思って投資したら、案外そうでもなかったというケースだってあるんだけど、それでも、人の行動を先読みして当てるという行為に比べれば、高成長が期待される会社を発掘することのほうが、はるかに確度が高いんだ。だから僕は株式に投資しているんだけど、偶然性に左右されやすいデイトレードはしないんだよ」

由紀「確かに、人の心の奥底を読むのは、不可能に近いことかもしれませんしね」
鈴木「先生は長期投資っておっしゃるけど、長期って、どのくらいの期間を指すんですか」

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