投資教育の授業を受けている高校野球部生は株価に興味シンシン 「で、どの株を買えば儲かるんですか?」 (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【参入障壁の高さに注目】

奥野「鈴木君が言うように、会社の利益は増えたり減ったりするところが大半なんだ。だから、利益がずっと増え続ける会社というのは、本当に極めて少ない。

 じゃあ、長期的に利益が増え続けるには何が必要なのか。これが鈴木君の質問にある『どんな株を買えば儲かるんですか?』に対する回答になるんだけど、参入障壁をしっかり築いている会社っていうことになるんだ。

 参入障壁っていうのは、他の会社が参入しにくい何かのことだね。たとえばスーパーマーケットが儲かるとしようか。スーパーマーケットは、こう言っては何だけど、誰でも商品を仕入れて陳列しさえすればできる仕事だから、それが儲かるとなれば、どんどん新規参入者が増えて、ものすごい値引き競争になる。それでは、会社は一向に儲からないわけで、この手の会社の株価はなかなか上がらない。

 けれども、誰にも真似のできない技術力やブランド力で、絶対王者的なシェアを持っている会社が鎮座しているマーケットには、なかなか参入できない。たとえばコーラなんてそうだよね。あれはもう圧倒的にコカ・コーラが大きなシェアを握っていて、ここに新規参入してコカ・コーラの向こうを張ろうなんていう会社は、まず現れない。世界で最も有名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、コカ・コーラの株式を何十年も保有し続けて、現在の巨額の富を築いたのは、有名な話だよね。

 このように、高い参入障壁を築いて、長期的に利益を増やし続けている会社を見極めるというのは、実際に働いてみるとわかってくることなんだ。実際に働いて、人のためになるのがどういうことなのかがわからないと、会社が儲かるかどうかはわからない。だから、資本家になるためには、まず働いてみる。

 そして、自分自身が働きながら、たとえば長期的に利益を増やし続けられる会社を探して、その株式に投資してみる。そうすることによって、単に労働力を提供する会社員ではなく、会社員でありながら資本家になるという道を模索することもできるようになっていくと思うよ」

【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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