投資について学ぶ高校の野球部生徒が株式投資にチャレンジ? 「つみたてNISAって何?」 (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【つみたてNISAの制度改正】

奥野「つみたてNISAは長期的に投資信託で積立投資をして、それによって得られた収益に対する税金を非課税にしますよという制度なんだ。

 投資信託を買うと、値上がり益や分配金という収益が得られるのだけれども、普通に買うと、この収益に対して20.315%が税金として取られてしまう。でも、つみたてNISAの口座を使って毎月積立投資した場合は、20.315%の税金を差し引かれずに済む。今のところ、毎年40万円が非課税枠だから、毎月3万3333円という中途半端な金額になってしまうんだけど、その額で積立投資を続ければ、課税口座で投資するよりも有利に資産を増やすことができるんだ。

 ところで最近、いろいろなところで報道されているように、つみたてNISAは2024年から大きく見直されることになったんだ。さっき毎年40万円の非課税枠と言ったけど、来年からは120万円まで非課税で積み立てられるようになる。しかも最大1800万円まで無期限に積み立てられるし、非課税期間も無期限になるんだ」

鈴木君「おお! 大盤振る舞いじゃないですか」
由紀さん「でも、日本って財政赤字がすごいんですよね。そんな非課税枠を認めちゃってもいいのかな」

奥野「由紀さん、鋭い。そこが今回の制度改正のポイントだと思うんだけど、そう簡単に1800万円もの非課税枠を認めるはずがないんだよ。ということは、何か交換条件があるはずなんだ。

 それは恐らく今の金融所得課税に適用されている20.315%を、たとえば30.315%に引き上げるとか、そういう話なんじゃないかな。もちろんそれは国民から反対意見が出そうなところだけど、実はつみたてNISAで1800万円の非課税枠があるから、ほとんどの人が持っている金融資産の額は、この非課税枠内に納まるかもしれない。

 そう考えれば、意外と反対意見は出てこなくなって、すんなりと金融所得課税の強化が実現するというシナリオを、この国の誰かさんは描いているのかもしれないね」

【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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