投資について学ぶ高校の野球部生徒が素朴な疑問を抱いた最近のニュース。「日銀って何するところ?」 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【背景にあるのは物価の上昇】

奥野「もう少し説明が必要かな。

 景気が良くなると消費が活発になる。たくさんのモノが買われれば物価が上がる。物価が上がると、たとえば1000円札1枚で買えるモノの数が減るから、お金の価値が下がったことになる。日銀は通貨価値の維持・安定をミッションのひとつにしているから、お金の価値が下がらないように金融調節を行なう。この場合、金利を上げれば、モノに流れていたお金が預金などに回るようになり、徐々に物価が下がっていって、お金の価値が維持される。

 とまあ、こういう理屈で、景気が良くなると金利が上がるということになるんだけど、由紀さんが言うように、今はそんなに景気は良くないし、この先もどんどん景気が良くなるというムードじゃない。

 じゃあ、どうして今回、日銀は長期金利の上昇を容認したのかというと、景気そのものはたいして良くないのだけれども、物価が上がっているからなんだ。物価の上昇についてはこれまでも話してきたし、みんなも、何となく生活実感で物価が上がっていると思うでしょ。

 景気が良くないのに物価が上がっているのは、原油をはじめとする資源・エネルギー価格が急騰したことに加えて、円安が進んだからなんだ。また、アメリカや欧州各国では労働賃金の上昇も物価の押し上げ要因になっている。

 ちなみに米国の長期金利は4%だからね。それを考えると、日本の長期金利は0.5%を上限にするどころか、1.5%くらいまで上がってもおかしくない。そんな状況で長期金利の上限を0.25%に無理やり抑え込もうとすると、債券市場がおかしくなってくる。だから日銀も、長期金利の上昇をある程度、容認せざるを得なくなったんだね」

鈴木「でも、長期金利が上がると住宅ローン金利が上がるっていうんでしょ。ローンの金利が上がると、お金を借りている人の生活が苦しくなるんじゃないですか」
由紀さん「もし住宅ローンの金利が上がった場合、借りている人ができる対策って、何かあるんですか?」

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